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小説ラビリンスと聖杯の秘密

ヒストリアン に続いて、今回は ラビリンス の巻
世界史は面白いよ、高校生達

ラビリンスの主人公は、現代っ子のアリスと13世紀のアレース。作者、美人のケイト・モス自身が英国生まれで、物語の舞台となっている仏蘭西の南西部に別荘を持つというので、自分が主人公になった気分で楽しみながら書き綴ったことと想像する。きっと充実した時を過ごしたのだろう。ちなみに、ラビリンスとは迷路のことで、聖杯の秘密を守る事に関連してしばしば重要ポイントで登場するが、シャルトルの聖堂の床のラビリンスは実に美しい

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アリスとアレースの関係は? 実は大きなポイントなんで暴露しないが、物語が二つの時代を交互に飛び交いながらクライマックスに向かって進行し、至る所にヒントやキーワードがさりげなく配置されているので、余ほど慎重に読み進めないと、普通の読者は一読では充分に理解出来ないであろう。ご他聞にもれず、私も二度目でやっと楽しみながら感心しながら読むことが出来ている。簡単なんだけど、多分日本人には難しい。

さて、13世紀のアレースに何が起こったのか? これが、アルビジョア十字軍という狂気の沙汰の物語なのである。最後にフランス軍に投降して孤高の要塞モンセギュール城は小説より実際が凄い。異端とされたカタリ派の信仰を胸に、死を迎えるがために山を降りていく幾多の異端キリスト教徒。キリスト教徒がキリスト教徒を十字軍という名の侵略戦争で滅ぼした場面は泣けてきてしまう。

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 十字軍とは、キリスト教徒が大義を掲げて邪悪なイスラム教など異教徒を攻める神聖なる戦いだと恥ずかしながら最近まで信じていた。世界史は高校で相当勉強したんだが・・・ また、911テロ後における対イスラムアメリカ十字軍の戦いも止むを得ないものと納得もしていた。しかし、古より「言いがかり的なヤクザ風先制攻撃」を手法とする十字軍が存在していたようだ。そうしてみると、「911テロがアメリカ中枢部のヤラセである」というトンでも無さそうな説が、マンザラ嘘でもないみたいに見えてきてしまうから不思議だ。

閉ざされた洞窟内で、愛する二人が生きたまま最後を迎える状況は歌劇アイーダに通じるものがあり、涙を誘う永遠の神聖なる名場面だ。勿論、アイーダに比べて物語りは目まぐるしく展開し、聖杯の秘密こそがダビンチに冒された読者の興味を最後まで引き続けているのだが、最後にすこし、現実離れした奇跡が登場するため、「エッ? そんなことアリ? ウソッ?」って叫びそうになる人も居るだろう。

ダビンチコードとの一番の違いは、この「聖杯の秘密」にある。物語の舞台カルカソンヌと、ダビンチコードの元本の舞台であるレンヌシャトーとは直ぐ近くであるらしいが、聖杯を守るという点では共通しても、これほどの違いを示されると、ダビンチコードとは何?って思ってしまう。秘密は暴露しないが、マグダラのマリアが登場しないことだけ言っておく。

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マグダラのマリアは、映画「パッション」でのモニカ・ベルッチの美しさで心に焼き付いてしまった。余談だが、映画マレーナの無修正版は更に眼の底に焼きついてしまう。だから、ダビンチコードの聖杯の秘密の方が私は好きだ。はは・・好き嫌いではダメだけど、ラビリンスの構成や場面展開、時代の魅力の表現は素晴らしい。この点はダビンチを遥かに超える実験的手法だろう。

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この悲劇的なアルビジョア十字軍は、良く考えると日本の戦国時代にも比較的類似した戦いの様相があったのではないかと感じる。しかし、異教徒ではない単なる静かな異端者に対してまで容赦なく行った火あぶりの刑はあまりにも残酷だ。女子の柔らかな身体を剣で切り裂き首を刎ね、噴出す血潮の匂いを餌のように興奮していく戦時の恐ろしい狂気。襲われた方からしてみれば、未来永劫とことん復讐してやろうと感じるのではなかろうか? そうしてみると、イスラム社会の若者達がキリスト教ユダヤ教にこれほど命をかけて戦いを挑み続けるのもマンザラ理解できなくもない。

キリスト教、イコール愛の宗教と一概に言い切れない不幸な歴史がかつて展開してきたことは確かな様である。数百年の後世、今の時代をヒストリアンはどう解釈しているのであろうか?

 

読んでくれてどうもありがとう。