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国銅 いにしえの奈良・・・

近頃、奈良は少し可哀そうなほどだが、本当はかつて凄い都だったんだよね。きらびやかに着飾ってはいるものの、東京や大阪や名古屋なんて全くの新参者だし、人気者の京都だって出来のいい後輩にしか過ぎないよね。

最近立て続けに、ウルサイ騒音おばさんや、元気な病気の公務員や、勉強部屋に放火しちゃった高校生や、頑張っている産科医を見捨てる自治体や、女児を殺めた写メールおやじなどのトンデモナイ話題ばっかりで、ほんとに奈良の善良な人々が気の毒になってくる。 

 

奈良国立博物館正倉院展が開催されている。雅子様オランダ旅行後の初めてのお泊り御公務に、聖武天皇に想いを馳せられたのか秋の奈良を選ばれ、古都を愛する国民として大変喜ばしいと感じる。しかし、正倉院の宝物は宮内庁の管理で聖武天皇の遺品であろうから、行楽シーズンに一般庶民が集う大変混雑した博物館を訪問されなくても、いつでも好きな時に自由に直接正倉院を訪問できるであろうに・・・と不思議に感じる。しかし、そうすると御公務ではなく、ただの見学旅行になってしまい何かと不都合なのであろうか?

 奈良を知るうえでは是非、国銅 を読んで欲しい。 
奈良東大寺のお話だが、人物造形も時代考証も緻密で非常に奥深く、特に大仏建造の描写はとても細かく丁寧に描かれている。気の遠くなるような単純だが命をかけた危険な作業の積み重ねが私達の胸に響き、静かな感動を覚える。

都に献上する良質の銅をつくるため、国人と言う主人公が、長門の国で懸命に歯を食いしばり銅の鉱石を採掘と精錬をする苦役に従事しているところから物語は始まる。優しき鋳銅作業のの相棒達。仏教に命を捧げる情熱的な僧や純情な故郷の娘との忘れられぬ出会いと別れ。

大仏の造営の命を受けて青年達は銅と共に奈良へ旅立った。いつ帰れるか、生きて帰れるかも全く判らない時代だ。瀬戸内海をはるばる奈良に向かい、大仏を作り上げそしてまた命がけで国に帰る、と言う長大な物語になっている。都滞在中や旅の途中で多くの仲間を失い、ただ一人だけ村に帰ると、一番会いたかった二人、師と仰いでいた景信と恋人というべき絹女が・・・・・   現代人には窺い知れない天平の世に生きる男と女のロマンを熱き想いで刻みつけた歴史小説の名作である。  

聖武天皇の時代の大多数の日本人は食うや食わずの困窮の極みにあったようだ。大化の改新により律令制が敷かれ、土地と民はすべて天皇の所有となり、重い税を課せられていた。大仏建立に携わった地方の民がどのように苦しんで労役についていたかが詳しく描かれている。天平文化を支えた多くの日本人の苦しみに思いを馳せながら奈良や東大寺を訪問されては如何だろうか?

 

この本の出版直前に帚木先生は皇太子と直接この本についてお話を交わされたという。どんな会話になったのか実に興味深い。

永遠の日本の都、奈良は素晴らしいと思う。

 

読んでくれてどうもありがとう。