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Back To The Street ふろむ診療所

コイの重い病

我が家に鯉がやって来た。正確に言うと、再び増えてきて賑やかになって来たのだ。今年の夏頃に、急に庭の泉水の鯉達がアップアップしだして動かなくなり、毎日数匹ずつ浮かんでしまった。朝起きると、前の日に元気そうに見えた鯉まで死んでしまっており、当時の父は何とも悲しそうであった。 

我が家に鯉が初めてやって来て既に40年になる。二つあった泉水は20年前に一つを埋めて芝生の庭にした。今は、デイサービスのお年寄りが散策出来る様にしている。しかし、ボケ老人の中には帰宅願望が強く脱走を試みる人もたまに居るので、設えたデッキから眺めてもらうだけの日が殆どだ。開設の際の希望は中々上手く行かないものだ。

 

鯉達には、逃げ場がない。獣医さんもいないし、病気に対しては外敵が少ないだけに無防備に近く、免疫系も発達は少なかろう。庭の手入れで消毒薬が混入するリスクは庭師もベテランだけに充分考慮している。付き合いのある鯉屋さんが「他所でも死んでるので、長梅雨で天候不純のせいだろう。地球温暖化の影響だ。」という声もあったが、この40年 天候のせいで死んだと思われた経験は無いし、絶対に違うと医師の眼には思えた。

10匹近く死んだり死にそうになった時点で、医師の私は決断した。薬局などをあちこち探して、試供品や期限切れや処方後に使用せず余っている抗ウイルス剤を集めて、粉にして池に撒いた。日に数回池に撒いてはみたが、泉水は常に酸素補給のために水を流しており、人ヘルペス用の高価な薬が鯉ヘルペスに効くかは知らない。母は「効くはず無いよ・・」と言いながら協力してくれたが、それでも毎日数匹ずつ死んで行き、とうとう3匹まで減ってしまった。池自体が死んでしまったかのように感じられた。人用の抗ウイルス剤は結果的には全く効いた感じはしない。やはり、ヘルペスではなく違う原因だったのだろうか?

それから三月ほど、生き残った3匹は元気に泳ぎ続けた。生き物が死ぬと何となく悲しくもあり、罪悪感もあり、原因が判らぬ不安もあって、家族としては当分鯉を飼うのは止めておこうと思っていたが、鯉屋さんが5匹程持って突然やって来た。自分のところも沢山死んだ。お客さんのところでも彼方此方で死んだ。多分、なんかの病気だったのだろう・・ 実は、我が家の鯉が死に始める数日前に数匹の鯉を父がそこから買っていたようだ。鯉屋さんは申し訳なかったのだろう。

河などで魚が大量死しなかったので特に報道もされず、誰もヘルペスという言葉を口にする人も居なかったが、多分コイヘルペスであったと思う。それ以外には、私の知識ではありえない話だ。保健所に調査を持ち込む気持ちはサラサラ無かった。お役人の行動はあまり生産的でなく、無駄に書類の山を築くだけだ。

先日から父がまた鯉を買い始めた。小さいのが多いが、安いのばかり15匹を超えた。まだまだ、惨事の前の30匹には程遠いが、「今度は大きいのを2~3匹買おう、高くなくていからヤッパリ大きいのがおらんとね・・・」と80歳にならんとする父の表情も明るくなってきた。

 

読んでくれてどうもありがとう。