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Back To The Street ふろむ診療所

久しぶりの湯布院(1)

本当に久しぶりの湯布院だった。最期にこの街に宿泊してから4年が経過し、何度か宿泊し雰囲気もあまり変わっていなかったが、「温泉に泊まってみたい」が口癖だった下の娘は全く覚えていなかった。家族旅行も思う様に出来ない開業医、幸せなのか不幸せなのか?しかし、折角行くときには絵に描いたように楽しもうと、数ヶ月も前からピークシーズンに予約していた先日、湯布院一泊家族旅行を楽しんだ。しかし、暖かな秋が一転、嵐の雰囲気となった土曜の夕方、おもいがけず都市高速が「強風で通行止め」になり、いきなり一時間以上の遅着となってしまった。どっちにしても暗くなっての到着予定ではあったが、夕食前に一風呂浴びる温泉旅館の楽しみが無くなって、一万円位損した気分になってしまった。

その旅館、湯布院でも名だたる老舗で数々の雑誌にも紹介され、NHK風のハルカ」の舞台ともなった有名旅館である。今度が確か五回目の家族宿泊であったが開業前の勤務医時代のほうが多い。毎回違った離れの部屋で楽しみではあるが、料理は基本的に大きなバリエーションは無く、それを目当てには年に何度も泊まりたいとは感じない。もっとも、高すぎて頻回には泊まれないのであるが・・・また、田舎の雰囲気が「実家の雰囲気」と似ているために、大都会出身者と異なり有り難味は少ない、などと言うと折角「その日がベストでしょうから・・」と言って日にちを選んでくれた女将さんに悪いのでこの位にしておく。

美味しい夕食をゆっくりと部屋で頂いた後、私達4人はフロント棟に出向いた。前回宿泊した時には無かったが、その旅館では毎晩夜更けに年代モノの蓄音機で客に音楽をプレゼントしている。係りの方が解説付きで素敵な「SPレコード」を竹針で聞かせてくれる。音が篭りだすと、竹先をシャキッとカットして再び生き返った音を奏でだす。確かに、「命を削るように素晴らしい音を搾り出している」というSPレコードには魅力があった。

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先客が何人も静かな雰囲気の中でうっとりと音楽に酔っていた。シャンソンの名曲の数々、昔懐かしいピアフの歌声。フランス大好きの私は、「ほらほらシャンソンだよ、シャンソン、フランス語だよ」と娘達にヒソヒソ話しかけたが、チョッと興味ないそぶり。これ、「ラビアンローズ、聴いた事あるだろ?」って教育的指導を行おうとしたが、目の前にあるお茶の道具の方が興味深い様だった。しかし、マンザラでもないらしく、予定の時刻に成った時に、「談話室でも同時に蓄音機でやってますからどうぞ・・」という声に、娘達は私達と一緒に温泉に入るのも忘れて、楽しく語りながらそっちに移動した。

談話室は私達の離れの隣にあり、10時を過ぎていたためにフロント棟よりも客は少なかったが、解説の方の気合のせいか、非常にウットリと楽しい時間を過ごせた。11時チョッと前まで子供達も聞き入っていたのには驚いたが、それだけ素敵な音色だったのだろう。大きくなって、いつの日にか今宵の事を思い出してくれると嬉しい。バイオリンの経験がある娘達にとってもクライスラーの奏でるバイオリンは独特の響きがあったのに違いない。一曲一曲、竹針の太さを選びながら蓄音機の名機から響いてくる音色は素晴らしく、その夜、皆が眠りについた後も私が鼻歌を歌っていたよと妻も嬉しそうであった。そう、クライスラーの1903年と1920年SPレコードは、私がこれまで聴いたバイオリン曲の中で「最も幸せだ」と感じさせてくれた名盤だと感じる。ただ、チョッと物知りそうなスーツ姿の客が、演奏中に物知り顔で薀蓄をたれていたのは少々興ざめで残念だった。せめて曲間にやって欲しいものである。

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時間が過ぎるのを名残惜しく感じながら、夜空の星を見ながら部屋に帰り、皆で大浴場に向かった時には既に11時を回っていた。大きなお風呂にたった一人入る贅沢、静かな夜だった。以前はもっと熱いと感じていたのだが、その夜はちょうど良い湯加減だったので子供達を待たせてしまったほどだ。。子供達も楽しくて興奮していたのか、部屋に戻ってから部屋のヒノキのお風呂にもまた入ってしまった。ヤット床についたのは一時を回っていた。私は、珍しく鼻歌を歌いながら幸せで二時過ぎまで眠れなかった。

 

読んでくれてどうもありがとう。