Welcome To The Heartland

Back To The Street ふろむ診療所

H5N1  その③

新型インフルエンザ(H5N1)のパンデミック時における被害予想の深刻さに関して各自の印象の違いは、ひとえに「高病原性あるいは強毒性」の解釈にかかっているように思う。つまりこれまで報道されている「致死率の高さ」をどう解釈するかである。

現在国内で異様な早期に流行中の(新型)Aソ連型インフルエンザなどの様に、たとえ新型であっても致死率の低い「低病原性あるいは弱毒性」の呼吸器感染症であれば特に日本人が恐れるには及ばないと思うが、近い将来にパンデミックが予想される「H5N1」は呼吸器以外に全身の臓器を標的にする高病原性だという。こうなると「インフルエンザ」のネーミングすら怪しくなる。

アジアで既に100名を越える鳥インフルエンザ患者の致死率はなんと60%以上で、本当かいな?と疑いたくもなる。上の写真はベトナムのものらしい。呼吸器以外にも全身からの出血も見られるとなると症状は「エボラ出血熱」に類似し同じ致死率となるが、これは発展途上国ゆえの致死率かもしれない・・・と安心しているムキもあろう。同様の患者数の段階では日本国内発生の場合には死亡率はどうだろうか?正直なところ、感染症指定病院で治療が受けられさえすれば恐らく半分以下ではなかろうか?

また、数年前のSARSで経験済だから・・と安心される方もひょっとしたら居られるかもしれない。しかし、SARSの時に患者はほぼ出なかったにもかかわらず、大変な心配があったのは事実であるし、疾病の質が異なると思う。SARSに関しても以前から記事にしたが興味があれば検索して欲しい。

もしも本当に「強毒性」で、死亡率が本当に「エボラ並み」であるとすれば、その感染伝播パターンから言って日本での死亡者数64万以上というのは決して間違いとはいえないだろう。その辺の解釈の違いで、①の人は「風説の流布はいけないよ」と感じたのであろう。しかし、警鐘は鳴らし続ける必要があろうと僕は思う。なにしろ日本人はパニック症候群に陥りやすいので、早い段階での情報開示と具体的な対策を各論としてシュミレートしていく作業は行政と現場医師が共同で進めなくてはならないと思う。

この「H5N1」という小説の中に【鳥インフルエンザ直近情報】という北海道のサイトが登場するが、恐らく小樽保健所の方の実在のサイトではなかろうか? それによると、中国で最近「人から人へ」の感染経路が強く疑われる感染者がとうとう出たとか・・・・。これは危険なサインかと思う。

しかし、現実の医療現場を見てみよう。

例えば、新型の「診断」はどうするのであろうか? 患者の咽頭ぬぐい液などからウイルスを採取し、まず「A型かどうか」を現在存在する簡易キット法で見つけ、H5N1の表面抗原を近隣の特定の施設に(送って)PCR法で疑って、さらに東京など感染症専門機関へ(送って)確定させるらしい。つまり、大抵の医療機関では初診で診断を確定は出来ないのではなかろうか?

 

しかし、(この本によると)発症時には既にウイルスを排出しているという。著者は専門家なので「ある程度本当」だとして話を進めるが、これじゃ普段診ている風邪症状の多くの患者とは区別出来ないし、院内で空気感染(飛沫感染も空気感染もするらしい)すれば医療機関や患者同士が感染源に簡単になってしまう。

そもそも現在ある「インフルエンザ診断キット」さえ流行時に安定供給されるハズはなく、確定診断する前に相当数が混在する「新型」に感染して死んでしまうだろう。それは診療所であっても拠点となる大病院であっても恐らく同じだろう。当院にも「発熱患者」は今日も昨日も明日も沢山来院しているが、その中に混在する「新型H5N1」患者を通常のインフルエンザや風邪と区別可能なはずはなかろう。

そこで各自治体が策定した「対策マニュアル」によると、流行時に大病院の駐車場などの(寒風吹きすさぶ)野外に開設される「発熱センター」での行列の出来る「トリアージ」などへ向わない患者が病院や診療所に押し寄せるのをどう防ぐ事が可能であるのか?がまずは大問題である。

 

この点に関して、僕は非常に心配している。昨今の日本人の受診行動を見ていると、「待てない」し「過剰に心配」して「自分だけは・・」という意識が強く、要するに「ジッと家でねてなさい」と言われても現代の日本人としては恐らく不可能であろう。そういう「発熱患者」が「発熱センター」以外にもお構いなしに来院されると思われる。来るなとお願いしても来るのではないか?

感染症指定病院のリストアップを見たが、私の県では100万人に一ヶ所程度で、パンデミック時には恐らく全く役には立たないだろう。本書の中で、大阪の大病院の副院長はパンデミック時の過労で死んでしまったし、多くの勤務医と看護師も死んでしまった。みんな特別にプレ・パンデミックワクチン接種はしていたのだが・・・

皆さんのお住まいの自治体の「新型インフルエンザ 感染対策マニュアル」をご覧になったことがありますか? 以前から報道を注意深く追われてると判りますが、凄いです。しかし、総論は凄いですが各論は全く闇の中で全てが「どうするの?」の世界だと心配しています。

勤務医と開業医と看護師が対立している場合じゃないんですが・・・

 

各論をこの後も少し続けてみます。

 

読んでくれてどうもありがとう。