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包括化の心配事

後期高齢者医療の包括化について最近の経験(あくまで他の開業医から聞いた話です)から心配事を一つ・・・

 

最近の日本社会では高齢者の独居と言うのが大変問題になっていると思います。この件に関しては何度か記事にしました。「独居老人」というのは孤立無援と似ては居ますが、必ずしも天涯孤独ではなく、親戚(子や兄弟)がそれほど遠くない地域に住んでいながら同居できないケースが少なくありません。

高齢者になりますと、眼も弱り 足も弱り 頭も弱り 経済力も弱ります。独居生活が可能な老人も段々と弱ります。そんな年寄りに取りまして、頼りは「医者や看護師やヘルパーさん」であって遠くの親戚では無いようです。また遠くの親戚に取りましても何かと悩ましい存在かもしれません。

 

最近(ある知人の開業医のところで)こんな事がありました・・・

色んな病気を抱え、やっと通院してくる独居女性患者。眼も悪く心臓も悪く足も悪く、やっと通院が可能ですが、子供も夫も無く一人暮らしでヘルパーさんに随分世話になっています。性格のいい素敵な老人で、周囲に笑顔を振りまきスタッフや患者の皆さんに好かれています。勿論、友人も彼女が大好きです。

 

彼女がある日その医院にやってきますと、ちょっと大きな問題が生じていました。元々血管の問題が起き易く、数ヶ月毎にある処置をしないと生命にも影響します。死ななくても場合によっては外科的処置を要し長期入院です。処置が素早いと入院が不要の場合が多いのですが、その日はギリギリの状況で、翌日までには是非ある特殊な処置が必要と判断されました。

さて、そうなると少し遠方のA病院での治療が必要です。その治療は急ぐ方が良いですが、翌日午前の治療枠を何とか確保できました。その先は都合で数日治療が出来ないらしく是非その枠でと知人は先方に無理やりお願いしました。

 

そこで誰がついて行くかが問題です・・・

最寄の親戚Bさんは都合が悪い、親戚Cさんは都合が悪い、親戚Dさんは病弱で無理、親戚Eさんは遠方で疎遠・・・ なんとなく流行の「たらい回し」のようですが、結局は再度Bさんにお願いしました。

ところがです・・・

Bさんは、「そんな急に明日連れて行けといわれても無理だ。何故もっと早く連絡しないのか。そんな急に悪くなるはず無いだろ。俺に相談も無く決めるな」と機嫌が悪いのです。急に悪くなる病気ですが、そこまでは一応同居家族じゃないので判らないではありません。

しかし、「だいたい医者ならもっと早く判るだろ。たった今、悪くなったのか? いつも金を払ってるから病院がナントカしろ。医者は相当儲かってるだろ、お前ら医者がナントカしろ。とにかく俺は連れて行かん」と 金(治療費)貰ってるから医者と病院が何とかしろ・・と強硬に主張されます。更には、「死んでもいいから俺は知らん。お前が医者なら何とかしろ。それに、もし明日までに悪くなってなかったら・・・あんた責任とるのか?」とまで言われますので・・・『あなた、何てこと言うんですか? 悪くならなかったら本人にとって良い事じゃないですか。それに、死んでも構わんと本人に直接いえますか?』と 電話で友人はBさんと激しく口論になりました。

 

家族ではなく親戚ですが、「保護責任者」だと思うんで連絡したんです。しかし、医療費払ってるから医者(病院)が面倒見ろ・・・と「医療費の包括」を主張されます。幾ら腹が立っても誰かが連れて行かねば明らかな損害が患者本人に降りかかりますし、長期入院や死亡もありえます。可愛い高齢女性です。「先生と看護婦さんが年取ったら頼り・・・」と何度も言われます。手を摺り合わせられます。

友人らは最悪の場合は看護師がついていく様に手配をして、もう一度、Bさんに「誰か探してほしい。もし無理なら早く連絡をして。そのときは市に相談してみるかも・・」と電話をしてみました。

友人らは「勝手な包括化」に情けなくなって、今後益々エスカレートするであろう【後期高齢者の包括化の問題】を嘆き哀れんでいましたが・・・「市に相談」という言葉が効いたのか、Bさんから「連れて行く」と後で電話を頂きました。

ちょうどBさんは虫の居所が悪かっただけで、恐らく本当は心優しい良い人なんでしょう。でなくちゃ、親戚を病院に連れてはいけません。ただマスコミ報道に影響されて、流行の「病院の責任」を追求したくなったのかもしれません。急に悪くなる病気があることが普通の人々には理解できないのかもしれませんが、高齢者の明日の体調は予測不能です。

紹介先への「付き添い受診」まで「包括化」に入っているとすれば、独居老人の「葬儀」まで包括?って、その友人の話を聞いて僕らも心配してしまいました。

 

PS.治療は確かにギリギリセーフで上手くいったらしいですが、『年取ったら、親戚より貯金が大事だわね・・』と、しみじみ語られていたそうです。最近は実の子供も政府も頼れませんからね~

 

読んでくれてどうもありがとう。