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名著 【英国紳士、エデンへ行く】

当ブログも内容は無い様だが、数だけは多くて既に第700記事目となり、その「記念記事」として何を書こうかと随分と迷ったが、今年最高の名著【英国紳士、エデンへ行く】の紹介をする事にした。今年はまだ始まったばかりであり、僕が今年読んだ本は これ一冊なのであるが、間違いなく「今年のナンバーワン」だと予言しておく。

先月書いたダーウィン紹介の本がある。長谷川眞理子さんの紀行本だった。来年はダーウィンの「種の起源」が出てから150周年らしい。その本の紹介の横に(何となくさらりと)紹介してあった【英国紳士、エデンへ行く】は、同じく「ダーウィンガラパゴス発見の本」だと僕は勘違いしながら、今年の第一作目の期待を込めて読み始めた。そして期待は裏切られた・・・凄すぎた。

 

時は同じく1820年に始まり、1859年に終わる壮大な物語であるが、ダーウィンは一切登場しない。登場したのは、「タスマニア島アボリジニ」と、「種の起源」より「我が闘争」に近い人種差別の医者と、「神こそ創世主」を疑わぬ牧師と、世界を股に駆けた密売船長たちだった。

 

その僅か後、1876年に「純血のタスマニア島アボリジニ」は絶滅してしまったのであり、それは英国人やオーストリア人、とりわけ「サクソン人」にとって心の傷になっているようだ。

 

ちょうど北海道と同じ大きさの島が南半球の同じ南緯で同じ東経に存在する。それが1642年にオランダ人のタスマンがヨーロッパ人として最初に訪れているが、その後200年ほどは【ヴァン・ディーメンズ・ランド】と称されていたらしく、ご承知の様に凶悪犯罪者の流刑の地であった。しかし、そこには遥か昔からの原住民である「アボリジニ」が暮していたのである。それも北海道のアイヌ民族と共通するものがあるかもしれない。

 

1803年にイギリスの流刑地としての入植が開始されて、アボリジニは急速に迫害され、僅か50年で子孫を残せない民族となり、ついには絶滅してしまった。

この本は、間違いなく名著である。

ダーウィン時代の大航海の有り様や、植民地の入植の有り様や、民族の滅びの有り様や、西洋人の驕りの有り様や、長い歴史と人々の暮らしと自然と文明の有り様が全編に様々な語り口で複雑な人間模様を描きながら我々読者に驚きと反省と興味を強烈に抱かせてくれる。

 

非常に面白いが、読書に慣れていない人たちには少々面食らう本かもしれない。時代は行ったり来たり、20人の登場人物の視点で物語りはクルクル廻り、150年前の文明は馴染みが少ないために、タスマニアメルボルン近郊の当時の都市名すら新鮮な驚きとなる。

 

もちろん「悲しい物語」でもあるが、原題は【English Passengers】であって、恐らくは読み返すごとに読む人に何通りもの感想を抱かせそうな・・・(帯に有るように)【物語を読む愉しみに溢れた圧巻の歴史奇想大作】だと本当に思う。

 

エデンの園タスマニアにある』という思いが英国人を遥々と帆船でタスマニアに向わせたのであるが、日本では幕末の黒船の時代である150年前の英国大航海時代の「愉快で悲しい物語」は、(僕にとって)今年最初の最高の名著である・・・と自信を持って700号記念に推薦します。

 

読んでくれてどうもありがとう。