Welcome To The Heartland

Back To The Street ふろむ診療所

イタリア逃避行②

フィレンツェでの学会発表は期待したほどの反応は無かった。でも、まあ良いだろう・・臨床医としては自分なりには頑張った。誰かが後を引き継いで花開かせてくれれば、僕は礎になって埋もれても後悔はしない。医学の研究とはそんなもの、経済とか金とかにしか興味の無い奴らとか、他人の税金で生活しようとかいう人には理解できないだろう・・・

 

それにしてもヨーロッパ人の英語はわかりにくいなあ、非常に疲れる。明日は近郊にドライブでもしよう。行き先は、サンジミアーノ・・塔とワインの典型的なトスカーナの小さな街。糸杉の丘を越えて妻とのドライブ・・

 

印象的な幾つもの高い塔が遠くからでも見える。うねるような丘とブドウ畑、初夏の明るい陽光は淡く陽炎の様に塔の街を包んでいる・・ 吸い込まれるように僕らは車を進め城壁の外の舗装されてない駐車場に車を止めて歩き出した。

 

アッシジより陽気で明るい雰囲気・・ワインの香り、塔の高さに圧倒される。遥かに見えるトスカーナの丘陵地帯・・こんな場所に時を過ごせば厚労省の役人どもと金輪際縁を切りたいと思ってしまう。

 

しかし、本当は僕は日本が好きなんだ。あんなバカな破壊者どもに穢される遠い日本に思いを馳せる・・・ああ、旅の途中で変なことを思い出してしまった。

 

翌日早く、フィレンツェを離れた僕らは中田のいたペルージャの脇を掠めて有名なピサに向った。海に近いピサ・・街は予想外に大きく、アッシジやサンジミアーノとは異なる観光地だと思うが、美しく整備された斜塔の周りでの人々の姿を眺めていると、世界中の誰もが似た者同士だと感じてしまう。

 

人は本来明るい生き物だろうが、今の日本は暗い世相で嘆かわしい・・・

 

ピサは意外と海に近い。せっかくだから、イタリアン・リビエラの宝石・・憧れのポルトフィーノまで行ってみよう。

 

半島をうねりながら進むと突然開ける海辺のシャングリラ・・・夢に見たこの光景、この広場に本当に車を止めてもいいのだろうか?と心配してしまう素晴らしさ。

 

左手に回り込む様に険しい坂道を登って行けば更に素晴らしい光景に出会えるという・・ 僕は妻の手を引いてうっすらと汗をかきながら急な坂道を進んだ。この右手の崖の向こうは外洋のようだ、左手の湾から爽やかな風が吹き上がってきて僕らの額を掠めていった。そして出会う忘れがたい光景・・・

 

そんな光景は、ポルトフィーノからジェノバ、ミラノと巡って北上した湖水地帯でも巡り合えた・・

 

氷河が生み出した細長い湖の輝き・・コモ湖での休日を僕らは忘れることは無いと思う。

開業医になって10年、地域のために身を削り家庭を犠牲にして頑張ってきた。まだまだ抱える借金に苦しむ身分ではあるが、医師としての誇りだけは大切にしてきた。しかし、金しか興味の無い奴らからの酷い仕打ち・・もう、身を粉にしての奉仕の心は切れた。頑張ろう、という気持ちから、自分と家族の生活を大切にしようと決めた。

収入はかなり減るだろが、心はきっと豊かになるだろう。人並みの自由を取り戻し、自分の時間を大切にしたい。余裕を持ち暮し、診療時間は健康状態に応じて短くして行こう。時間外加算などという騙す様な官僚の言葉に付き合う気持ちは既に無い・・

 

イタリア逃避行の終わりは・・・間違いなく「ベネチア」だろう。

別れの似合う街、夢の終わりを楽しめる街・・夢見ながら沈む街、ベネチア

 

長い長い4kmにも及ぶ橋を車は進み、入り口で巨大なガレージにドロップ・・ 後は船と足とでこの街をさすらおう。時計も外して運河に投げ入れよう・・・

 

鉄道旅行も終着駅なのか始発駅なのか? ベニスシンプロンのオリエント急行にいつの日か身を委ねたい・・・叶わぬ夢かもしれないが。

 

さあ、心ゆくまでイタリアを楽しんだなら、再び故郷の日本に帰ろう。彼の国は疲れ果てているし、猜疑と利権に惑わされてしまっている憐れな状態だ。あんな金・書類・天下り・・の臭い奴らに負けてたまるか・・である。

来週から僕は生まれ変わる・・・

 

心ゆくまで人生を楽しもう・・・

 

読んでくれてどうもありがとう