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Back To The Street ふろむ診療所

脳出血の患者・・・

今夜は登録済みの研修会に行くはずだったが、出発直前の時間外に急患が来たので取りやめになった。お陰で?ユックリ時間が出来たので・・・ブログでも書き残そう。 

 

墨東病院の今回のケース、関係者の皆さん大変でしたね。特に患者ご遺族の心中はいかばかりでしょう。

石原都知事が「報道機関の医者叩きを批判している」ことに正直驚いていますし、石原が変わったのにいまだに変わらぬ報道機関の不具合には更に驚かされてしまいますが、大都会東京の都立センター病院でのインパクトのある出来事ですから、将来的な事を考えて有意義な建設的な意見交換と行政の真摯な取り組みを期待します。

少し気になっていますのは、開業医側と墨東病院側の紹介時電話のやり取りが元で、「両者だけの医療ミス問題」に矮小化されつつある心配があります。

脳出血という具体的な病名を伝えなかった開業医が悪い』という意見や、『電話から脳出血を推測しなかった産科当直医が悪い』という「言った 言わない」の議論は現場の「その数分の時」がいかに難しいか一般の方々にも是非わかってほしいと思います。また両医療機関には冷静になって「協力して国家の愚策を糾す」姿勢を求めたいと感じます。

【犯人は政府など医療政策決定機関であり、患者と医師は両方が被害者】というのが本筋だと思います。

 

さて、貧相な診療所である僕のところでも脳出血クモ膜下出血の患者さんは時々診ます。脳梗塞に比べると通常の脳出血は診断が難しいと感じています。今回は激痛でしたからクモ膜下出血を第一に考えると思いますが、無痛の脳出血脳梗塞か別の疾患か区別しにくい場合も多いですね。

告白しますと、僕も何度か「診断が遅れた」と感じたことがあります。幸いに、『出血か梗塞かはっきりいえませんが、とにかく頭蓋内病変だと思います・・』と紹介すれば近郊の病院でそれなりのところは断りはしません。田舎ですから他の選択肢がないんです。でも、「めまい・はきけ」程度で会話も歩行も「ほぼ正常」という時に、とりあえず点滴・・・と忙しさに感けて他の患者さんの診察を行っている間に危険な時間が過ぎてしまうことがあります。何度か「少々遅れたかも・・」というケースを思い出します。

 

今日の昼休み直前に「住民検診」を受けに来た高齢女性がおられます。カルテの名前には「@@@ @@」、半年以上も前に脳出血をおこして紹介した患者さんでした。紹介時の症状は・・・「難治性めまい・はきけ」、僕の診断名は・・・「内耳疾患か小脳梗塞疑い」でした。しかし、紹介先での診断名はハッキリした「脳出血」でした。

僕は冷えました、後悔しました、心の中で彼女に謝りました。彼女は僕を信頼して他の病院からお知り合いとともに移ってきた方でした。僕が症状を取り去ろうと点滴をしてる間に脳で出血していたようでした。僕も循環器医ですから典型的な脳血管病変は普段診断できています。しかし、この時を含め「少し遅れて、しかも診断できなかった」症例があった事は反省材料として脳裏に深く記憶しています。

 

紹介時の脳外科専門医とのやり取りの中で、『場所が良さそうで、後遺症は視野狭窄程度で済みそうです』と聞いていましたが、数日後に「お礼に来院された」ご家族との話では予断を許さない印象も感じていただけに、通院が長く途切れていた最近は「やはり寝たきりになったのかな~」という心配を仲良しの患者さんがたが受診されるたびに思い起こされていました。「@@@さんはどうなったの?」と訊く勇気はありませんでした。

 

今日の@@@さんは、全く後遺症がないように見えました。会話もその知的レベルも上品な風貌も物腰も何もかも脳出血発症前と区別がつきませんでした。僕は正直 我が目を疑いました、疲れで妄想・幻想がとうとう出現したかとも感じました。

まだ当院に戻ってくることを紹介先が許可してくれないので「先生に元気な姿を見せにきました。是非お世話になったお礼も言いたくて・・」と必ずしも必要ない検診を受けにきてくれたようです。手土産まで頂きました。僕は嬉しいやら恥ずかしいやら申し訳ないやら・・・眼鏡が曇ってしまいました。午前の最後だったのでユックリお話できたので幸いでした。予言どおり、視野欠損は少しあるようでしたが・・・

 

でも、脳出血を即座に診断しても今まで数名の患者さんは助けられませんでしたし、重篤な後遺症が残った方もおられます。他院で脳出血をおこしてサバイバルをして当院に通院しておられるかたも10名以上はおられます。そんな患者さんの不自由な姿を見るたびに「急性期の状況」を推測しますが、各自の急性期は様々な様相だったはずです。一つの話では無理・・・それが病気です。

 

妊婦の脳出血クモ膜下出血?)・・・とっても厳しいですよね。産科医が瞬時に正確に診断することは簡単ではないと思います。

 

初期研修プログラムを終えた後期研修医なら脳新患も出来るでしょう? お産も小児も眼科も精神科も出来るはずでしょう? 僻地で一人で戦力になるでしょう? なんで診断も出来ずに断るんですか? 集約化もして産科医が6人もいたんでしょう? 超一流の病院にマッチングしたんでしょう? 高い給料もらってるんでしょう? プロでしょう? 

 

そんな厳しい「個人批判の言葉」では何も解決はしませんよね。

「訴訟の心配」がある以上、この国の救急医療は崩壊するだけです。勿論、救急だけではすみませんよ・・・解かってますか、政治家やマスコミの皆さん? 

金融恐慌より医療崩壊が恐いですよ。「新型インフルエンザ」で皆さんどうしますか?

 

読んでくれてどうもありがとう