Welcome To The Heartland

Back To The Street ふろむ診療所

師走に想い出す患者

街では 清らかに歌う 無邪気でセクシーな天使たち

きっと ツリーの下で 夜が明けるまで悪ふざけしてるだろう

だけど 今年は本当に・・・クリスマス・タイム イン ブルー

 

師走の 温かいような冷たいような夜の景色を見ながら 僕は時おり 僕を叱った患者さんを 想い出してしまう

 

 

 

その患者さんは今はこの世にいない。多分、天国にいるのであろうと思うが、診療が終わってすっかり暗くなった庭を眺めると 開業した10年前の冬が甦る。

 

僕のクリニックには「クリスマスツリー」にするのにピッタリなヒマラヤ杉の大木がある。開業時に実家の庭から父がプレゼントとして移植してくれた10m近い 姿の良い木である。今も玄関脇にシンボルツリーのように元気に立っている。

開業したての冬、僕はその木を明るいイルミネーションで美しく飾った。田舎には珍しいほどの電飾の立派なクリスマスツリー、沢山の患者さんや通行人から 「この木は何という木ですか? ぴったりですね。綺麗ですね」と誉められて少々自慢げだった。

 

そんな僕を一人の患者サンが諭すように叱った・・・

『先生、私はあの立派な木、あの木に電飾するのはダメだと思います。木は生き物です。夜なのに明るく照らされ、電線を巻きつけられて、幹も葉も悲しみ苦しんでるはずです。ここは美しく上手に手入れされた庭で私も楽しみに通院してますが、この電飾だけはダメだと思います。木が弱りますよ、きっと・・』

そう言って 患者さんが診察室を後にされた。定年退職後に「海外協力隊」として南米に渡りたいと希望されていた患者さんで 庭木に詳しい話好きの方だった。

僕は翌年から「イルミネーション」を止めた。スタッフからは「どうして? せっかく人気だったのに・・」と残念がる声も上がったが、その患者さんの眼は真剣かつあたたかだったので僕は患者さんの意見を尊重して・・・「生きた木」へのクリスマス電飾を一年限りで止めた。そして周囲に次々にクリスマスイルミネーションが増えてきても後悔はしなかった。

 

その患者さんは厳しい高血圧があり、翌年の冬に脳出血で倒れた。倒れる前の師走、「先生、よく止めたね。止める勇気 大変だったでしょ?」とニコリと笑った顔を今も想い出す・・・

「省エネ」ではなく、「生き物を大切にするこころ」

クリスマスの時期、当院では室内の飾りつけだけにして、庭は落ち葉と苔とで自然な侘び寂びの飾り付けをすればいいと思っている。

そのヒマラヤ杉は夜に明るく輝いてはいないが、何となく開業当時よりも元気そうに見える。

 

読んでくれてどうもありがとう