Welcome To The Heartland

Back To The Street ふろむ診療所

届いた 「一枚の写真」

当ブログを書き連ねるうちにネット上で知り合った女性から 昨日 「一枚の写真」が送られてきた。旅先で撮った写真だ・・・とのこと。せっかくなら 彼女自身の顔が写る写真を送ってほしかったのだが、助平?中年医師には怖くて送れない・・・らしい。だから、その女性の顔も知らない不思議な「ブログ友達」である。

 

さて、上がその届いた「機内からのアルプス」写真である。きっと感激して写したのだろう。彼女は11月に スウェーデンストックホルム)と スペイン(バルセロナ)を一人旅していた。添付された情報は「両国の移動中に機内から撮影したアルプスの風景です」・・・だけしかなかったが、僕の心には「一体どこの山なのだろうか?」という探究心が芽生えてしまった。

 

まずは、上の地図を見て欲しい。彼女はスペインの「バルセロナ」から先日帰国したそうだが、便宜上、地球をひっくり返して写真の上方が南西方向である。白い線は、ストックホルム(下)とバルセロナ(上)を結ぶ最短距離の直線である。赤い印の場所が写真の場所 スイス(アルプス)である。

 

上は一枚目の写真と同じものだが、地形には幾つか特徴があった。

1)大きな氷河(緑色)が向って右に柔らかくカーブして流れる。

2)11月なのに一面の銀世界、比較的高い山系だと思われるが紹介の機内アナウンスは無く、撮影者は山の名前を知らない。

3)ここの最高峰は赤い印のピーク、水色の稜線が集まるので、比較的目立つ独立峰ともいえる名峰であろう。

4)最高峰の向こう側(ピンク)は厚い雲に覆われているが、連山というより比較的平坦な印象。恐らくは国境の山系であろう。

5)太陽の影が右側、ただし撮影時刻が朝か夕か不明なので正確な方位は不明。もし正午なら右方向が北かな。

6)写真の構図角度特性から勝手に推測すると飛行機の進行方向は右方向、すなわち左側の窓からの撮影と考えられる。

 

 

それらから僕が最初に思い浮かべた山系はこの写真、上の「ゴルナグラード展望台手前から名峰モンテローザ方面を望む」風景だった。右端には名峰マッターホルン、左端には高峰モンテローザ、下端にはツェルマットがあり、登山列車の終点ゴルナグラード展望台からは氷河越しに美しいパノラマが堪能できる。山の向こうはイタリアだ。多くの点で合致する。ただ、太陽の影の方向が気になる・・・ それに・・・

上の写真をご覧いただこう。スイス付近の最短飛行コースが白い線、黄色い線がスイスを囲む国境で、右がフランス、中がスイス、左上がイタリアである。ピンクの印付近がモンテローザ、最初に思い浮かべた山系だが、スイス全体の位置がオレンジ色の印のような推定飛行経路からは遠すぎる。ということは、恐らく飛行経路自体が間違っていることになる。きっと、飛行機は観光サービスの気持で「スイスアルプス上空」をワザと飛んだのであろう・・・

後で知ったが、実は大きな間違い、勘違いを僕はしていた。確かに実際の飛行経路はスイス上空へ回り込んでいたのだが、彼女の話では、「バルセロナ から ストックホルム へ向かう途中の左側窓から撮影した」という。なんと、飛行方向が間違っていて、オレンジではなく 赤い矢印が正しかった。バルセロナからストックホルムへ「往復」して帰国したらしく、飛行方向は僕の先入観だったのだ。

そうなると、赤い矢印は実線でも点線でもどこでも良くなるのがだ、「モンテローザ山系 案」は完全に消滅してしまう。そこで、僕がピンときたのが、もう一つの「赤い印」・・・・

 

ためしに、予想した地域を「グーグルアース」で照らし合わせてみた・・・ それが、上の写真、目的地点の真上からの映像だ。方向は元の写真と合うように調整してみた。

まず、季節は違えども 氷河(ピンク)の大きさや流れがそっくりだった。国境(黄色)の山系で、稜線の集合が類似している。

そう、ここに間違いはない・・・ アルプス最高峰の「モン ブラン山系」だった。正確に言うと、上がフランス、下がイタリアで、スイスとは関係が無い。

日本人になじみの街 シャモニー(右上オレンジ)から ロープウエイ(オレンジ線)で エギュ・デ・ミディ(赤矢印)に登って眺めるモンブランとは裏側の風景となる。だから、ほとんどの日本人はこの角度からのモンブランを見たことはないと思う。

 

結局、上のようなオレンジ色の飛行経路で、左側窓から赤い点のモンブランを彼女は撮影していたのである。それが、下の風景と見事に合致する・・・「Google Earth」は素晴らしい、人を神に近づけてくれる。空を飛ぶ鳥にもしれくれる・・・

 

この「写真の山の正体」を解き明かして教えてあげたら彼女は感激してくれた・・・かな?

では、なぜ彼女は機内アナウンスもないのに、偶然にも「アルプス最高峰、名峰モンブラン」を撮影して、しかも感動して僕に記念写真として送ってくれたのであろうか? それには訳がある・・・と僕は思う。

 

彼女は、11月に温かいバルセロナから凍てつくストックホルムに飛んだ。離陸して一息ついた頃、突然飛び込んできた美しい白銀のアルプス山脈に感激しないはずはない、何しろモンブラン(まっ白い山)なのだから・・・

 

最後にもう一枚・・・・ これはモンブラン山系を方向を変えて、スイス側からスペイン方面(北から南)を眺めたものだ。左がイタリア、右がフランス(水色の点がシャモニー)。赤い点がモンブラン、ピンクの線が氷河。

どうでしょう? スペインから北へ向かうとき、「最初に出会うアルプス」こそが モンブラン だったのです。11月と云えば冬への季節の変わり目、誰だって感動する風景の変貌だったことでしょう。

僕自身も、初めてのヨーロッパで 5月に温かなイタリアから冬化粧のアルプス山脈を越えて春のオランダに飛んだ時の変化するアルプスの白銀の輝きは25年たっても鮮明に覚えていますから・・・

 

では最後に、なぜ僕が裏側からのモンブランの風景にピンときたか? これにも実は秘密がありました・・・

http://blog.m3.com/BackToTheStreet/20070620/3 

以前、新婚旅行の記事を書きました。そこで書いたと思いますが、僕らはモンブランを裏側(イタリア側)から眺めています。最後の写真でオレンジ色の線は、イタリア側の(日本人があまり利用しない)ロープウエイの位置を描いています。あの地点から僕らはモンブランを堪能しました。

 

顔も知らない女性から届いた一枚の風景写真、今ではパスポートさえ持たなくなった開業医にとって、こんなに沢山のドキドキ感を持つものだったとは、彼女はきっと想像もしていなかったことだろう・・・

でも、実際に診療所を抜け出して・・・旅に出たいものだ。

 

読んでくれてどうもありがとう