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Back To The Street ふろむ診療所

よそを眺める余裕を持ちたいけど・・・

クリニックを新規開業するとき、介護施設を新規開設する頃、思い描いた「医師としての自分の理想」を具現したいと願い 寸時を惜しんで他の施設も見学したり ソフト面もハード面も 更には人事の面でも研究に研究を重ねていたものだ。そして自分としては満足いく仕上がりで開院して、職員にも患者層にも恵まれ、それなりに周りから成功したと云われるような道程を歩んできたかもしれない。

しかし、今年6月に開業満十年を迎えて いま静かな年の瀬に振り返ってみると 最近の僕には その頃の「よそを眺める余裕」なんてものがすっかり影を潜めてしまっていたことを感じて少々情けない気持ちがしている。

自分にとって、職員にとって、患者さんにとっても最善のものを創りあげたい・・という気持ちは失ってはいないが、年月と進歩の速さには ひょっとして ついていけてないかもしれないと感じることがある。

 

今日の大晦日も明日の元旦も仕事で病院で過ごしているし、日曜日以外の休みは取ったことがないが、昨今の医療情勢厳しき折、なかなか「自分の時間」を持てなくなっている。

この10年間、まともに病院を受診したことはない。たまたま身体が丈夫なだけだったのだが、2度ほど知人のところで日曜日に無理言って診てもらっただけである。

ということは、普通の時間の普通の診療風景を僕は10年間も見たことがない・・・ということだと知って愕然とした。忙しすぎるのだからしょうがないことだと思ってもいたが、「医療のプロが他の施設の近況を知らない」というのは実はお粗末な状態だと思う。レストランのシェフは評判店を食べ歩き、旅館やホテルの社長や女将は名門施設を泊まり歩くであろう。美容室も 場合によっては風俗店の店主も 他の店舗の研究は熱心に行うと思う。だが、僕は他の医療機関を最近全く受診していないし、見学さえしていない・・・・ これでは「プロ失格」かもしれない。

 

最近、日曜日にやってる矯正歯科に子供と一緒に出かけることがあった。自由診療の矯正歯科、大都会の真ん中の 大きなビルの 広いスペースに オシャレな内装。そしてオシャレな服装とヘアスタイルの女性スタッフたち・・・ 

僕の医院もオシャレな雰囲気が無くもないが、ロビーのやわらかそうなソファーに座って オシャレな雑誌をめくっているのは、小奇麗な都会の雰囲気の若い女性たちと 子供達ばかり。小さな冷蔵庫には 無料のドリンクも 煎れたてのコーヒーもあり、テレビの代わりに高そうなオーディオセットが壁にかけられ 静かにコンテンポラリーミュージックが流れていた。

とても静かで安心感があって心地よい雰囲気の待合ロビー。大都会だから少々狭いが、受付スタッフとの距離感が程良い・・・ で、僕の目に飛び込んだのが、美しい女性スタッフの耳と胸元に存在する あのセット。すべてのスタッフがゆっくり歩き静かに囁くように患者に語りかける。なんだ なんだ なんだ・・・ ?

 

子供が診察スペースに行ってる時間に、他の患者さんが居なくなった隙に 僕は(一番可愛い?)スタッフに話しかけた・・・だが別に 歯科医院でナンパしようとしたわけではない。

「あの~ ちょっとお聞きしたいのですが・・・」

『はい murajun様、お支払いは現金と承っておりますが、お振込のご案内を差し上げておきますね・・』

「あ、いえ、お金のことではなくて、あなた方の耳のそれは どんな場面で使用されるんですか? 会話はみんなに聞こえるんですか? 一日中してて耳が疲れませんか? 先生もされてるんですか? 設備工事が必要ですか? ・・・」

『これは、インカムと申しまして、murajun様の内科では少ないかもしれませんが、歯科では多いですよ。先生ももちろんされてますが、全員に聞こえてしまいますから ラブコールは無理ですね・・・』

もちろん、最後の一言は創作だが、僕の所で使えるならと思ったけど無理そうだった。でも、一時間近く内部を眺め廻して スタッフの動作や会話を観察しているうちに、「僕は少し遅れてしまったかな~」と反省させられた。東京などの大都会では 歯科や美容整形だけでなく、通常の内科や外科でもこうかもしれない・・と感じてしまった。

 

当院では患者さんは車イスだったり、杖歩行だったり、咳がしたり、警報が鳴ったり、難聴の患者を大きな声で読んだり、ソファーがオシッコで濡れたり、床に吐物や血液が飛び散ったり、患者に怒鳴られたり言い争ったり、テレビで演歌が大音響でながれたり、僕もスタッフも走ったり・・・・ なんか雰囲気がぜんぜん違うのであるが、時々は「よそを眺める余裕は持ちたい・・」と、来年に向けて思う大晦日・・・である。

きょうは、通常診療で開けてたけど・・・暇でした。

 

みなさん、良いお年をお迎えください。

今年も一年間、つまんないブログ記事を読んでくれてどうもありがとう