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Back To The Street ふろむ診療所

ガラス細工の様な・・身体と精神

親戚の叔母さん(95歳)が大腿骨頚部を骨折してしまった。痛みにハッキリと気づいたのは今朝のデイサービスの送迎に行った時。股関節付近が痛くて乗車しづらく、結局は整形外科を受診して骨折が判明した。乗車した後で もしも下車時や介護中に痛みだしていれば、家族からのクレームが来るケースかもしれない。しかし、運が良かったのは乗車前だったことと、彼女が親戚だったこと・・・

 

実は土曜日に僕が診察して詳しく事情を聞いていたのである。95歳とはいえ、彼女は新聞を今でも隅から隅まで読むような頭脳明晰な女性である。彼女の姉も同様であったが、96歳で他界している。3日前にデイサービス内で乳母車を自走してトイレに行ったようだ。排便後に立ち上がろうとした際に少しぐらっとして両下肢に脱力感があり、介助されて戻ってきた。しかし、その時には痛みはなく、急速に歩行がかなり元に戻り、上肢筋力や神経学的異常もなく、一応僕の診断では「脳梗塞と大腿骨頚部骨折は少なくともなかろう・・・」ということで、週末は家庭で様子を見てもらった。もちろん、24時間の緊急連絡先を教えて・・・

ところが・・・今朝になって骨折と判明した。

いくら痛みがなくて歩行が元に戻っても、トイレの便器から立ち上がる動作だけで骨折、あるいは亀裂が生じていた可能性がある。ボケは全く無くて訴えも信頼でき、診察も問診も十分であったとしても、その後の時間経過から見て「単に便器に座ったり立ち上がろうとしただけで骨折する・・」ということが高齢者ではありあえる・・・ということを再認識した。

 

医療や介護の現場で生じた全ての骨折や窒息などの事象に関して、「病院の注意義務違反」とか「スタッフが注意していれば回避できた・・」という家族からの訴えと一部の裁判官の判断が続いているが、高齢者の場合、座ったり立ち上がっただけでも骨折する・・・ということを裁判官も一般の人々も知ってほしいと思う。

今回は親戚だし訴訟沙汰にはなりはしないが、もし事情が少しでも違っていれば訴訟・賠償などという可能性もあって、このような「不可避の事故」まで医療関係者や介護スタッフのせいにしだすと、勤務スタッフの精神的負担は想像以上のものになって、医療現場で生じているのと同様の介護崩壊が起こりうると思う・・・

 

ガラス細工のような高齢者の身体、十分に思いやりながら接するのは当然であるが、ガラス細工のように壊れやすいのは介護現場のスタッフの精神・こころ も同様であるとつくづく感じる。

 

読んでくれてどうもありがとう