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Back To The Street ふろむ診療所

15歳の新春

今日は旧暦の正月三日、爽やかに晴れ上がった快晴の天気だった。早朝は氷点下だったものの、午後の日差しはまさに新春そのもの。診療の合間に何度か診療所の庭先に出て、膨らみだした花ミズキの蕾などを眺めては、温かな季節の到来を肌で感じた。

 

先日、この冬一番の寒波が当地を襲った・・・ まさに襲われた心境だった。というのも、娘の高校受験の日だったのである。第一志望校は僕の母校、昔は男子校だったが、数年前から女生徒を受け入れるようになった。

 

娘の希望と妻の要望もあって、当日朝に僕が車で送る予定にしていた。かつて通いなれた道ではあったが、数日前に僕は講演会出席のついでに母校への道を久しぶりに車で確かめに行った。下見のつもりだった・・・

卒業して30年も経ち、かつては田畑や空き地だった周囲の風景は一変していて、建ちこめたビルや店などで見通せないようになっていて・・・・夜だったこともあり、僕は「曲がるポイント」を間違ってしまった。試験直前に不吉な暗雲が迫り来ようとしていたが、妻と娘からは「だから言ったでしょ? 年取ったのよ・・ でも当日はしっかりネ」とお叱りとも激励ともとれる言葉を拝聴した。そうして試験前日を迎えた・・・

 

暗雲こそ立ち込めなかったが、雪雲が垂れ込めた・・・

夕方から経路に当たる高速道路と都市高速道路が雪で通行止めになってしまった。天気予報では翌朝まで更に降り続くようで、窓の外を眺めると シンシンと降り積む雪景色・・・「キレイだな~」と珍しい雪景色を鑑賞する余裕などあるはずもない。

こうなるともう、当日朝に自動車で僕が送ることは完全に不可能になった。残る方法は、早起きして友人や塾関係者と電車で一緒に向かうか、近くのホテルに前泊するか・・・悩んでるうちに夜の9時になった。

突然の大雪、場合によっては電車も止まりかねない状況のためか、当然のように近くのホテルはどこも満室だった。電話しても「満室です」の返事だけ・・・と思ったら、不思議なことに ネット検索で希望ホテルが一室だけとれた。一室だけ・・・

 

娘も妻も、僕の母校だったので縁起をかついだのか、同行してほしいと希望する。しかし、試験前夜に ツインに夫婦と受験生の娘が泊まるわけにもいかない。娘は狭いシングルベッドに「二人で仲良く寝れば?」と余裕なのか不安の裏返しなのか・・・でも、妻が嫌がった。いくらmurajun でもムラムラしては受験の邪魔だ。

そして、程近い 無茶苦茶さびれた超安い古~い 場末のビジネスホテルに 僕だけが別れて泊まることになり、イザ出発・・・となり、タクシーを呼んだ。

 

我が家は緩やかな坂道の途中にあるが、予約したタクシーはなかなか来ない。家の前の道は真白、何台も車が登れなくて路肩に放置されているではないか・・・ よく見ると、その向こう、坂道の下の方に登れなくなったタクシーから運転手さんが降りて すべりながら我が家に向かってくる姿が見えた。

娘が、運転手さんや僕ら夫婦に「お願い、絶対に滑らないで・・」と懇願すればするほど もっと滑りそうになるから笑ってしまう。

 

ほうほうの体で電車に飛び乗ったのが試験前夜の10時30分、ようやく深夜12時近くになってホテルの部屋にたどり着いた。もしも翌朝に電車が遅れたらこれまでの努力が水の泡だという思いで急遽前泊する羽目になったが、今となっては僕ら家族にとっては良き思い出である。

 

美しい雪景色の母校や校舎に入る娘の姿を写真におさめようかと思ったが、二度と戻ってこれなくなりそうで・・・我慢した。いつか母校で娘と一緒に写真に収まれる日が来ることを期待して・・・

 

30年前には校内に女性の姿を見ると興奮してはしゃぎ回っていた僕らだが、今では娘の合格を祈りながら、校舎に向かう背中を眺めるオヤジになってしまった。

 

そして今日、娘にも15歳の春が・・・

診療時間中に妻から届いた連絡に、不覚にも涙がこみ上げて来て、僕は退席して顔を洗いに行った・・・ 後輩になるであろう娘と顔を合わすのが楽しみだ。

 

読んでくれてどうもありがとう