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Back To The Street ふろむ診療所

淑子 と 通子

どうしても 医者になったばかりの今井通子さんが「史上初の女性だけのパーティーでのマッターホルン北壁登攀」を成し遂げたことが気になって仕方ないので、心の導くままに彼女に関連した本を読んでいる。

クラブ活動に真剣に取り組んではいても、僕の周りにはそこまで余裕のある女性医学生はいなかった。男性顔負けどころか男性以上に男性らしいと云えば今井医師に叱られそうだが、25歳で快挙を成し遂げたのが同じ医学部生として過ごした僕には信じられない。

確かに僕らの馬術部でも国体出場くらいはやったけど、マッターホルン北壁と富士山五合目ほどの差がありそうだ。西川史子とか芸能御用達女医しかいない現代にもしも今井通子が現れたとしたら・・・恋に落ちてしまうかもしれない。

 

  

新田次郎さんの小説 「銀嶺の人」の中で、マッターホルン北壁登攀の副隊長格である淑子先生は医師国家試験を終えたばかりの女子医大泌尿器科新入医局員。前衛的天才クライマーが率いる山岳会に誘われ鍛えられる。マスコミの注目度は事前には低く、遠征資金もなく、北壁には女性二人だけで挑み、登攀後に遭難しかかる。

 

  

今井通子さんの記録 「私の北壁」の中で、マッターホルンを含む欧州遠征隊の隊長である彼女は医師国家試験を終えたばかりの女子医大泌尿器科新入医局員。自ら山岳会を作り、そこへ年下の加藤滝男氏をコーチとして招聘。遠征隊の隊長として、朝日新聞社資金援助を獲得し記録映像隊をひきつれて北壁登攀を撮影されながら成功させ、「少し期待外れだった」ともう少し難易度の高い登攀を期待していた。そして、そのままシャモニーに入り、モンブラン山系の難易度の高い登攀にも成功。途中、高山での医学的研究も行う。山で血圧測定・尿量測定・心電図記録・顕微鏡下での血球数計測などを行う。

 

小説の中の淑子と記録の中の通子・・・間違いなく同一人物ではあるが、実際の今井医師を 小説家新田次郎が描くとこうなるのか・・という意味で興味深く、また素晴らしい。

 

とても25歳の女性研修医が欧州遠征隊の隊長として並みいる天才クライマーを統率して遠征を成功させたことが(事実なんだけど自分には絶対出来そうもないという意味で)信じられないのである。しかも当時としては十分なレベルの医学研究も並行して行っているのである。「私の北壁」の登攀(ノンフィクション)記録も、本当にそこまではっきり覚えているんですか?と驚くほどの完璧な記憶力、まるでフィクションの様だ。

今の東京女子医大の山岳部にも同様な女傑が存在しているのであろうか? 医者のなかにはとんでもないマルチタレントが比較的高率にいると思うが、今井通子は別格ではなかろうか?

淑子と通子・・・僕はどっちも好きである。新聞社と記録映像隊が周囲に存在していたとしても快挙は快挙、いささかも価値は下がらない。

 

対して僕はどうか? 医療以外での僕の社会的存在価値はあるのか? 自慢できるような趣味や特技もなく、他の人への影響力もなく、ただただ毎日を平々凡々として生きているだけの存在になってしまっている・・・

 

 

読んでくれてどうもありがとう