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Back To The Street ふろむ診療所

女性の聴診・・・

久しぶりに「m3掲示板」を覗いてみてビックリしました。医師限定の掲示板で現在の閲覧・書き込みランキングの断トツ第一位は「女性の聴診は痴漢行為か?」というタイトルのスレッドでした・・・ そこには色んな意見がありました。

  

  上半身裸にして基本に忠実に丁寧に診察すべしと訴えるベテラン医あり・・・

  いかなる場面でも女性看護師の同席を求むべしと訴訟に備える若き医師あり・・・

  ブラジャーはそのままで認めるべしと諦める中年医あり・・・

  着衣の上からでも聴診可能と説く呼吸器科医あり・・・

  ブラジャーの横から手を差し込んで頑張る循環器内科医あり・・・

  中学校の検診の教育に問題アリと悔やむ老医あり・・・

  見せたくない女性は診てあげないと開き直る若き医師あり・・・

  診察なしの検診もアリかもと提唱する女医あり・・・

 

などなど、非常に活発な議論が巻き起こっていますが、医師限定なのでブログ転記は控えます。しかしながら、若い人の中に「私はシャツの上からブラジャーしたままで聴診しますけど・・・」と諦めなのか開き直りなのか、はたまた最近の医学教育の賜物なのか・・・そんな医師が増えているようで驚きです。

 

僕が卒然教育を受けた頃、そして循環器内科での研修を受けた頃、シャツの上からとかブラジャーをしたままとか絶対にあり得ない状況でした。もちろん、他の患者さんなど医師・看護師以外には見られない配慮をして診察します。個室でもタオルを肩から掛けたり軽く上着を羽織ってもらって、仰臥位においてもバスタオルでの無用な露出をさけつつ、しかしながらブラジャーははずして、聴診器は直接肌に接して聴診をしていました。もちろん今も同様です。

ただ、一度だけ某公立女子大の検診に行った際に、広い教室?で数十人の20歳前後の女性達が上半身を完全に脱いで、胸を手だけで隠したり完全に曝したりしながら順番を待っていたときはビックリ仰天して動悸がおさまりませんでした。緊張で身体のアチコチがカチンカチンに強張ってしまいました。あれはいけません・・・ 眼もつぶれそうでした。

 

開業医となり11年たった今はどうしてるかというと・・・ もし初診であれば(主訴が何であっても)一応以下のようにします。

  

  最初に「問診」を出来るだけ詳しくします・・・ここが最も肝心、ここで真面目さを見せます。

  まず対面して、両手の平を眺め(1秒)、両手首で脈を見ます・・・押し付けたり緩めたりして約5秒、必ず両手です。

  次に片手を離して、その手で下腿の浮腫が無いかを見ます(3秒)・・・しかし片手は脈を見たまま。

  そして両手を使って、瞼の貧血を見ます(3秒)。浮腫の疑いの場合には顔のあちこちを押えます(5秒)。

  首とアゴの下を触ってリンパ節を触診します(5秒)。場合によっては耳を引っ張ったり押したりします(3秒)。

  首の前の方の甲状腺は二秒ほど眺めてから3秒ほど触診します。

  (必要がありそうだと・・・口の中を見ます)

  

そして、胸の真ん中をちょっと触って「前を開けてください」と静かに言います・・・ そしてゆっくりと患者に準備の時間を与えつつ聴診器を耳にかけます(10秒)。この間に・・・患者のほとんどは自発的に前を捲ってくれます。

おそらく、そこまでの時間のかけ方で「この医者は真面目に診察しようとしているようだ・・」と判断してくれるのでしょう、拒否感はまずありません。

 

この際、ブラジャーはどうでもいいです。どうせ、手を使ってずらすか捲るかして聴診が充分に出来るように工夫しますから・・・はずしてくださいとはあえて言いません。

面白いことに、最近の中高年の患者さんでブラジャーをしてない女性が、「すみません、今日はブラジャーをしてません・・」と謝る人が増えています。確かに見たくない場合も無くは無いですが謝ることではなくてブラジャー無しで診察が基本です。

丁寧な女性患者さんは、胸をはだけて、持参されたハンカチやタオルで僕が聴診器をあてる前に汗を拭いてくれます。これは有り難いですね・・・

前の聴診が終わる(15秒)と、後ろの聴診をします(12秒)が、もっぱら前を心臓関係、後ろを肺関係と割り切ってます。ちなみに横の方の呼吸音は後ろを向いたときに行います。

そして、もう一度前を向いてもらって、首の両サイドの頸動脈の聴診をします(3秒)。

 

引き続いて、初診の場合には必ずベッドに仰臥位になってもらいます。最近の患者さんは「ベッドに横になってください」と言うと、本当に「横向き」で寝ようとしますから、あまり仰臥位での診察を他医ではされなくなっているのでしょう。 

  

必ず、スカートやズボンのベルトを(自分で)緩めてもらって、「ちょっと下げますよ・・」と断ってからヘソ下5センチほどまで下げます。これ以上下げると陰毛が露出して「変態エロ医師」と罵倒される危険性がありますので余程の腹部症状の時だけにします。

 

一応、循環器科の基本に沿って、丁寧な触診(10秒)のあと腹部とソケイ部(これは着衣の上から)の大血管の雑音を(6秒)聞き、足の甲の部分の拍動(4秒)と両膝の裏側の動脈の触診(4秒)を両手で同時に比較しながら行います。 

ここまでで異常が無ければ・・・「はい、もう良いですよ」と言って背中を向けてカルテに所見を記載していきます。

(もちろん、主訴によって必要な診察は追加します。これはあくまで 基本セットコース です) 

 

書き終わった(60秒後)頃、患者さんが着衣を整えて椅子に座りますが、隠すために掛けたバスタオルを畳んだか放りっぱなしか・・・を一応こっそり「観察」します。これは、「性格」を観察しています。

(再診患者では仰臥位の診察は省くことが多いですが、座位での診察は毎度同じスタイルです・・・)

 

この間は出来るだけムッツリ黙ってではなく、仰臥位になって腹部を触るときは「所見」を分かりやすい言葉で口に出しながら診察をします。後で説明時間が短く出来ますから・・・。

これで恐らく全部で3~4分程度でしょうか? 時には10分程度に延びることも時々あります。安静時の血圧と脈拍数などは診察前に看護師がキチンと測定しています。

 

ちなみに聴診器は壊すほど使用します・・・(笑)

http://blog.m3.com/BackToTheStreet/20090604/1

これが僕の診療スタイルで、イチローがバッターボックスに入るときに自分のスタイルを守るのと気持ちは一緒です。もちろん、この自己流の作法で診察しても診察しなくても異常所見の発見機会はそれほど違わないでしょうが、イチローが打率を . 310 から . 360 に挙げる努力と似てる気がします。

http://blog.m3.com/BackToTheStreet/20090916/1

 

恥ずかしながら、日々の診療スタイルを書いてみました。「ここまで診てくれる先生は最近はいなくなった」と中高年の患者さんに言われると・・・なんとなく嫌~な気分になりますが。 

 

まだ、胸や腹を丁寧に診察して苦情を言われたことはありません。内科医、特に循環器内科医にとって聴診などの理学所見の大切さは昔から変わっていないと信じています。

 

読んでくれてどうもありがとう