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Back To The Street ふろむ診療所

不覚にも泣いてしまった

妻と子供の前で不覚にも初めてワンワン泣いてしまった・・・

中学生の娘は父親が突然泣き出したので居辛く感じたのか部屋を静かに出て行ってしまった。つい数秒前まで冗談を話していた妻は、最初は何故夫が泣き出したのか不思議がっていたが、程無くその理由が呑み込めたみたいで、後ろから僕の肩に手を置いて・・・『あなたも良くやってきたじゃない? 立派なものよ 泣く必要なんかないわ・・』 と自分まで泣き出しそうな感じの声で言ってくれた。

そうかなぁ? そう言われてもますます涙が出てきて止まらなくなり、もう父親の権威など全くかなぐり捨てて涙を隠すのもやめた・・・

 

娘が通う高校(僕の母校でもあるが)のOBが寄せた文集を読んだのだが、50名ほどが後輩達に自身の卒業後の経歴と仕事の選択などをメッセージとして伝える文集である。

僕が実際に知る先輩達や各方面で活躍している後輩達、そしてまだ20代の若者達が自由に本音で意見を熱く述べていた。

特に現在20代後半から30代後半の名も知らぬ後輩達の活躍の様子が・・・眩しくて、羨ましくて、新鮮で・・・

同じ様に医学部を卒業していても、時代のせいもあろうが、僕が踏み出しきれなかった様な世界に堂々とキチンと準備をし地固めしながら歩んでキャリアアップして行く後輩達の姿のなんと活き活きとしていること・・・

文系や医学部以外の理系に進んだ同窓生達のなんと多彩な、なんと豊かな人生であることよ・・・

中にはテレビで活躍を取り上げられている後輩や有名医学部教授もいるが、歳の近い先輩後輩だけでなく、一回りも二回りも歳が離れた若者達の人生こそ僕の涙を誘った要因だった。

 

中学高校の頃に考え感じていたこと、そして今へ連なる時の流れ。必然と偶然、出会いと共鳴。連続と行き戻り、世界と日本。多くの同窓生が文系と理系と跨る様な興味を持ち仕事をしている事に改めて気付かされた。

僕の人生は既に50年が経過して後半戦。経済的には恵まれて、恐らくは妻が言うように「成功者」の一人かもしれない。しかし、同窓の先輩や後輩の人生と語られた言葉を読むと、自分自身が情けなく感じられ、既に夢を抱かない単なる肥満の中年開業医にしか感じられず、涙がとめどなく流れてきたのだった。

 

出来る事ならもう一度あの頃に戻って別の人生を歩めれば・・・ 苦労し失敗する事を恐れなかったあの頃に戻って、今の若い人が経験する様な新しい感覚の人生を歩めたら・・・ 

自分の人生はもう半ば変えようがないところまで来てしまっていて、地域と深く結び付き過ぎて、新しそうで実は典型的な古い開業医のままである事に今更ながら気付くと、「こんな人生を高校のあの頃には全く想像していなかったのに・・」と、今の人生を捨てて一からやり直したいという思いが涙を誘った。

収入だけを比べたら、もしかして文集に載っている優秀なOBの中でも多い方かもしれないが、社会への貢献度とか後輩たちへの影響力とか、時代や国家との関係性とか・・・実に僕の人生は情けないものだと思う。

それなりに感性豊かな人生を歩んできたつもりで自己満足に浸っていただけだった様だ。何も子供たちに誇れるものはないし、こんな文集に書けるような人生ではなかった。

 

そうして一しきり恥ずかしげもなく妻と子供の前で初めて涙を流してみて、なにか少し吹き切れたような気もした。自分の今を一生懸命生きてきたという感覚は何となく持っている。どの瞬間が欠けても今の自分が無かったのも確かだと思う。ただ比べれば輝きはあまりにも鈍く、単なるありふれた人生だった。

もう少し生きる時間があるだろうから、もう一度、なにかに熱く挑戦してみたくなった。昨日、僕は若返ったような気が少ししている・・・

 

よき文集を読ませてくれてどうもありがとう