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命の洗濯の旅(最終章)

旅・・・

それは若かりし日々においては 特に意識せずに身を任せていた自然な時間だった。

伴侶や子供が出来てからは 自分勝手が影を潜めて誰かに合わせる様な出来事になったが、それはそれで楽しいものだった。

勤務医時代には 不自由ながらも自由な時間を利用して海外も含め旅はまだ身近なものだった。

特に3年余のアメリカ時代には 毎日が旅、それもプライスレスな人生の旅だった・・・ 幸せな時間はあっという間に過ぎ去った。

開業医になると 自由なようで極めて不自由な時間をどう工夫して心の旅を楽しむ事が出来るか、まるで挑戦の様な日々に心が挫けそうになる。

 

そしてコッソリと匿名でブログに書き記す小さな平凡な旅の記録・・・それは果たして旅と言えるほどの豊かな時間が流れただろうかと、先日の26時間の旅を思い出している。今の僕には精一杯の26時間の旅・・・ 僕以上にタイトな時間の中で仕事に明け暮れる人々も多いと思うが、少しは共感していただけるのか? しかり飛ばされるのか?

 

さて、今回は旅の記事の最終章である・・・ たった26時間が冗長な記事5本にもなってしまった。

 

桜満開の4月の京都に向け土曜の夜8時の最終便に飛び乗った僕は例によって帰りの予定なんか立ててはいなかった。とりあえず旅立つ・・・ 案の定、帰りの新幹線は夕方の便は満席に次ぐ満席、自由席の通路に立ち尽くす程の元気が中年医師の足腰にはもはや残されていなかった。

さりとて数時間もジッと駅で待つ元気もなく、時間を楽しくしてくれる女性も伴っておらず、酔っ払いの予想外の深夜コールで相当に寝不足だったので、追加料金を払ってグリーン車でユッタリと座って一刻も早い便で帰ることにした。そうしないと翌日は寝不足で事故死や誤診をしそうだったから・・・

 

一部で話題になっていた車内誌には例の明細書発行義務を求めた勝村某氏の顔写真が載っていた。一応敬意を表して読んでみたが、あまりの勝手な主張のためか車酔いなのか気分が悪くなって吐きそうになり、高い金を払ってグリーン車に乗った事を後悔した。掲載を依頼した?JRの見識を疑った。でも、一つだけ良かったのは、勝村某氏の顔を覚えたことだろうか・・・  一応、持ち帰って今後の参考にしたい。いずれリスクマネージメントを含め何らかの役に立つ事もあろう。

 

吐き気を堪えつつ読み終わり、グリーン車の座席を堪能し眠りについていた頃、僕の携帯電話が震えた。起きてデッキに移動中に電話は一旦切れたが、ナンバー表示は朝4時に僕を起こした例の酔っ払いからのものだった。またまた安眠妨害だ。

二度目の電話が震え、グリーン車のデッキに急いで移動し出てみると、『今朝は済みませんでしたね・・ 病院に行って点滴受けました・・』と素直に謝る患者、感心はしたが僕が今どこで何をしてるのか、全然判らないで電話してきたようだ。それも当然なのだが・・・ でも電話だけなので診療代はいただけない。

 

まだ話が終わらないうちに携帯電話が突然切れた・・・トンネルだった。

JRは僕ら開業医が厚労省の命令で365日24時間電話に出て地域医療に貢献出来るように トンネルの中でも携帯電話が絶対に途切れない様にして欲しい。もちろん、JALも ANAも 機内でも携帯電話が利用出来るようにしてくれなきゃ地域医療に貢献できないので困るのだが。

 

座席に戻って、衝動的に隣席の車内誌を手にとって例のページを破って捨てた・・・ 開業医と勤務医の待遇の差を批判してあったので、旅は残念なことに後味が極めて悪かった。開業医が勤務医より楽だという固定観念に毒された人間が大事な委員をしている事に無性に腹が立って、悲しかった。

 

僕はあんなつまんない大人にはなりたくない