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Back To The Street ふろむ診療所

鼻をツンツン

最近は【中共傀儡仙谷独裁内閣】の話ばっかりで、新しい当ブログ読者は僕が医者、しかも循環器専門医資格を持ってることなど全く想像もしてないという良からぬ噂を耳にしたので久々に高尚な心臓病の話をしてみる・・・

自称・高尚な話である・・・【鼻をツンツン】である

 

さて、事の始まりは一年近く前の事、50代前半の男性が当院を突然に訪れた。心拍数が150回/分以上となる発作性上室性頻拍症(PSVT)と思われる初診患者であった。

貧相な開業医の所には医者は一人しかいない。余談だが、看護師も若いのはいない。朝11時という外来で最も混雑してる時間帯の初診の緊急・頻脈患者は経営的には嫌なのであるが、紹介状を他の病院に書くほど暇がもったいないので自分で治そうとするのも貧相な循環器開業医の性であろう。この時も、待合室の20人程の患者の合間合間に救急の仕事を粛々とこなした・・・

 

いつものように・・・まずは、(ヤッテランナイな・・と内心感じながら) とりあえず

外来患者を3人診て、チラッと救急患者の問診・バイタルチェックをして・・・

外来患者を2人診て、多急ぎで救急の心電図と胸部レントゲンと心エコー検査をして・・・

外来患者を2人診て、若くない看護師に救急の心電図モニターを付け静脈確保をし、静注用ワソランを準備させて・・・

外来患者を1人診て、頼むぞ・・・と、ワソラン静脈投与を開始して・・・

5分かけ5mg投与しても正常化せず、続けて5分観察してる間に外来患者をさっさと2人診て・・・

更に5分観察しても改善なく、しょうがなくワソラン2.5mg追加投与して・・・ なおらず、5分観察してる間に外来患者を2人診て・・・

しょうがないので、更に2.5mg追加して計10mgになってもなおらず、ガックリしながら外来患者を3人診て・・・

まだ治らないので、しかたなくあと5人外来患者を診て一応全員終わらせて、12時になっても朝8時からの頻脈は一向に改善せず・・・既に来院後も一時間経過

泣く泣く12時からの透析患者の回診を断念して・・・

 

やけくそで教科書的な【バルサルバ手技】(息止めイキミ)を試みて・・・ダメ

若いのでダメもとで教科書的な【頸動脈洞圧迫】を試みて・・・ダメ

ガックリして天を仰いだとたんに・・・ピコン、と心拍は正常化した(SRに復した)ので、神に感謝して冷えた昼ご飯を食べた。僕も冷えた・・・

そして、早々に大学病院に紹介状を書いた・・「この患者はPSVTが難治性で頻度も増加しててアブレーション希望です、ヨロシク」

 

 

で、数日前に再度同じシチュエーションで、同男性が久々のご来院。マッタク、招かれざる客である。

大学病院では後輩が「アブレーションは待ちましょう・・・」と言ったらしく、朝8時からの頻拍発作を我慢して11時に来院された際は外来患者は18人・・・デジャブ、である。

 

心電図モニターを装着しつつ、今度は「貴方の不整脈は難治性だよ・・・今日は知らないよ、治らないかもよ」と冷徹に宣告して、外来患者の隙間隙間で先程までの経過をコピーの様になぞった。

前回との違いは・・・それでも治らなかったこと

 

で、予想通りにワソランを既に10mg投与しても治らず、他薬剤の追加投与は副作用の面からも控えたかったので、

まずは無料なので【氷水飲み作戦】を2度遂行したが・・・ダメ

【アシュナー眼球圧迫作戦も】も手加減し過ぎで・・・ダメ

患者の指を喉に突っ込ませて「ォウェ」っと言わせても・・・ダメ

さて、かくなる上は諦めて救急車を呼んで基幹病院へ回すか??? 

しかし、カッコ悪いしな・・・

おまけに、若くない看護師も患者も「変なことさせる医者だ」という不信感の眼で僕を見る。なんとかしなきゃ・・・

 

で、スッと20数年前の遠い研修医時代の記憶が蘇ってきた・・・・

 

『看護婦さん・・・、緊急ペーシングするぞ、リード持ってきて・・・』

「せんせい、うちには有りませんよ、ペーシングとか・・・」

『ァッそっか・・・ じゃ、マーゲンチューブ持ってこい・・・』

「せんせい、ここ消化器科じゃないので正規品はないです。コレなんかどうですか?」

『おい、それは導尿カテじゃないか、チンチンに突っ込む訳じゃないぞ・・・』

「じゃ、これは? あ、でも消毒の期限切れです、せんせい」

『期限切れでもいいからそいつを早くよこせ・・・』

 

といって持ってきたのが、痰吸引のチューブだった。

若くない看護師と患者は「この医者一体何やるの?」といった不信感で僕を見つめる。患者は少々震えていた・・・可哀そうな患者だ。死を意識したのかもしれない。さぞ、こんな貧相な開業医の処置室のベッドでは最期を迎えたくなかったに違いない。その気持ち、よく判る。

 

切羽詰まって僕が試みようとしたのは、チューブを食道に突っ込んで食道粘膜を刺激して迷走神経反射を起こして心拍を低下させようとした非常に古臭い手技であるが、もう20年ほど試みる必要性もなかった。しかし、・・・

鼻に入れても咽頭の方へ進まない・・・

「私はアレルギー性鼻炎で鼻詰まりなんです」と患者がポツリ

そうか、じゃ反対側からトライするか・・・と鼻の穴に突っ込んでツンツンと鼻咽頭部をチューブで刺激すると・・・なんと、1秒で正常化してしまいました。目出度し目出度し・・・

 

貧相な開業医は『最近は鼻の中をツンツンする手技を教えるのかなあ?』と若くない看護師に尋ねましたが、「さあ、最近の事情は知りません」と、感心しきりの眼差しで僕を観ていた。メモまでとっていた、感心感心。

でも、感心していた患者がまた忙しい時間帯にやってくるのはご遠慮願いたい。

 

僕は一応医者ですから、政治ゴロではありませんから