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Back To The Street ふろむ診療所

台風の影響か?

今日の外来は開業以来12年余で最もスムーズに運んだ。スムーズ過ぎて、職員達から「センセイ、何かいい事あったの?」と訝られるくらいに「絶好調」の外来だった。

いわゆる「ハイテンション」という奴で、死ぬ前の最後の灯の輝きかと・・・後ほど感じたほどの外来だった。

なんと・・・110分程で約35人を実際に診察してしまった。一人3分ほど、内容は充実し、患者は満足して帰宅し、カルテの字は汚すぎて読めない状況だった。

これだけのスピード診療は当院では初めてで、3人いた受付がテンテコマイで、2人いた看護師からも「センセイ、もう少しゆっくりしてあげないと受付さんも回りませんよ」と初めて「ナースストップ」が出たほどだった。

ちなみに、隣接する調剤薬局もテンテコマイで、待合スペースも当院より相当狭いので入りきれず、外で待ったり車内で待ったりと大変な目にあわされたそうだ・・・申し訳ない

 

 

で、久しぶりに超余裕で透析室の回診に向かおうとしたその途端に・・・院内の電気が1秒ほど消えて各所で警報音が鳴り響いた。一階でもアチコチでピーピー言うし、二階でもピーピーの大合唱だ。いわゆる「瞬間停電:瞬停」の様であるが、実は違った。

前も書いたが、当院では停電防止のために全館をまかなえる自家発電装置を設置する金が無くて、特殊な装置を設置して地域の配電網を2か所から取り込んでいて、片方が停電すると他方へ切り替える仕組みを10年来採用していて停電で困ったことは全くなかった。透析施設にとって突然の停電ほど怖いものはない。台風より怖い・・・

今日の瞬間停電はその切り替えだったのだ。つまり、北側の広域停電が生じ、南側から電気を引きいれたようだった。これ自体は年に数回有ることだった。しかし、今日はその瞬間停電(送電切り替え)が立て続けに6-7回も繰り返し生じてしまった。このため、1-2度なら全く問題の無い透析液供給装置の濃度異常が起こってしまい、電気は復旧していても30分ほども送液停止で20数名の透析患者さん達がパニック寸前になった。はたして透析継続が可能なのか? それとも中止すべきなのか? 

電灯を見ると・・・なんとなくチラチラとしている。目の錯覚か? あっ、また停電だ。

 

この時、僕は「もしかしたら僕は今すでに死んでいるのではないだろうか?」と思ってしまった。最近よく映画とかであるが、死んだ自分に気づかずに自分の行動を観察している自分・・・

あっ、また停電だ。透析室に警報が鳴り響く・・・

技師が電力会社に電話し、透析装置の業者にも相談している・・・

休憩中のスタッフも全員かき集められた。院長(一応、僕)のが指示なくてもスタッフは整然と対応している。誰も院長の僕の存在に気付いていないようだ・・・

 

看護師達が「これからどうなるか判らないので、安全優先でもう回収しましょう・・」と手分けして回収作業に入った。患者がパニックに陥らぬよう、みんな冷静に作業をテキパキと進めている。そして僕は・・・自分が死んでいるのではないか?という不安感と戦っていた。

12年間で最もスムーズに進んだ外来診療と、12年間で最も恐ろしい停電の繰り返しに遭遇した確率の奇跡的な低さに「やはり僕は既に死んでいるのかな? こんなことならもっと楽しい事を色々しておきたかったな。沢山の美女と付き合ってみたかったな・・」と感じて透析室全体を虚ろな目で眺めていた。

 

電力会社から連絡が来て、「広範囲で停電が生じていて、高圧電線の接触事故らしい。もうすぐ復旧する予定・・」との内容だった。透析施設で停電に神経質な環境なので以前からよく連絡してくれる。どうやら、少したるんだ高圧電線が折からの強風に揺らされて接触した時に停電をしてしまったようで、ついたり消えたりを繰り返したようだ。

ふと窓を開けて空を見上げたが、きれいな秋の青空が広がっていた。周辺はのどかである。人々の生活はいつもと変わりなく、透析室の中の緊張した雰囲気とは別世界である。

送液が復旧した・・・

患者さん達にも笑い声が戻り、看護師達にも余裕が生まれた・・・

僕自身は、「やっぱりまだ死にたくないな・・・」とポツリと独り言を口にしたが、幸いなことに、患者さんもスタッフも聴こえなかったようだ・・・

 

読んでくれてどうもありがとう