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Back To The Street ふろむ診療所

初 PET 検診

特定検診という国家による壮大な無駄が始まって以降は意図的に止めてしまったが、開業以来しばらく基本検診という名の特定検診より数段マシな公的検診を夏場の日曜日に当院でも行っていた。ただ、正月も祝祭日もなく年中透析診療をしている上に日曜日が無くなることで、ドンドン自身の命を縮めてしまっていることに気付いてからはキッパリと日曜検診を止めてしまった。僕が過労死しては従業員の生活にも支障がでるし、どうせ得た利益は納税で大半は消えていくのだから・・・

しかし、日曜以外は夜まで診療して祝祭日も土曜も盆正月もGWも仕事仕事の身の上では、他人の検診は出来ても自分の検診はなかなか出来ないのであって、何を隠そう、まともに検診を受けたことが開業以来13年余なかったのである。

もちろん、一般採血やレントゲン撮影や心電図や検尿などの通常項目の検診は自院でしていたし、血糖測定や腹部エコーや心臓エコーなどは自分自身でコッソリ施行していたのではあるが、世の多くの責任ある立場の人が毎年のように行う様な、例えば「CT」 「MRI」 「PET」 などと言うものはしたことが無かった。何を隠そう、病院受診と言うものは日曜日の緊急受診以外は開業してから一度もしたことが無かった。毎年上限の50万円以上も健康保険料は払っているが、全く利用しない超優良の被保険者と言うことになる。

 

さて、前置きが随分と長くなってしまったが、僕自身の記憶用に、「初PET検診の体験談」を書き残しておきたい・・・

 

数ヶ月前にほど近い某病院から「PET検診」の案内が届いた。毎年パンフレットは数か所の病院から届いていたのだが、そこは日曜コースを今年から始めたらしく、他に日曜日にPET検診する病院を近くで知らなかったので早々に申し込んだ。もちろん、その病院の診療レベルには日頃から信頼を置いていたので他の病院を探すまでもなかった。

人生50年を過ぎると妙に胸騒ぎもしてくるし、多くの現在過去の有名人や偉人なども50歳程で死去される話も非常に多い。60人近い従業員を抱えたいま、僕には健康に仕事を遂行する責任もあろうというもの、観念して癌にマトモに向き合ってみることにしたのである。

残念ながら今回申し込んだ日曜検診コースは基本的なもので、胃や大腸の内視鏡検査はオプションでも含まれていなかったが、まだ日曜日にそこまではやっていないとのことだった。やはり内視鏡もとなると画像診断医に加え検査する医師まで日曜日に必要になるので利益が出にくいのであろう。それでも、僕が気づいただけで、医師のほかに15人程の事務や検査技師や看護師などがいたし、あの節電とは無縁の様な快適でユッタリして機能的な建物や高機能な検査機器を設置・維持していくことは、この競争が激しくなった医療界でも容易ではないかと思う。

その某病院は大学病院より先にPETを導入した位の地域でも(というより、国内でも)有数のハイレベルな診断・治療機器を揃えた病院であって、当院からも多くの患者を紹介しているのであるが、僕自身が建物に入ったことは一度もなかった。良い機会だと、病院見学・職員教育調査など研修を兼ねて病院を訪れた・・・

どうやら僕が一番乗りか・・・、と思いつつ玄関に向かうと、出勤してきたスタッフ達に「おはようございます」と笑顔で挨拶をされてしまった。隠したくても自然に僕から発するハイソなオーラが相当な御仁と思わせたのであろうが・・・、初っ端から気持ちよく利用者を持ちあげる職員達はよく教育されている。

こうしてPET検診初体験は始まった・・・

後で感心したのであるが、PET検診センターのエリアは実によく設計・配置されていた。各部屋はユッタリと、他の人との接触も可能な限り少なく、実に贅沢な造りであって、チマチマした当院の狭さがケチくさく情けなく思われた。ただ、庭を望む景色は当院が勝っているし、受付嬢の容姿も当院が明らかに上だ。残念ながら、少々歳も上だったが・・・

受付嬢の制服も当院の方が高級そうに見えた。しかし、流石に検診施設だけあって、腹囲は皆さんキュッと引き締まっていて・・・、検診は全く退屈さとは無縁だった。

 

受付前が各検査の待合スペース的な役割も果たしている。そこには実に高そうな椅子やテーブルが並んでいて快適であったが、なぜか数台あったテレビが全てアナログ放送中で、ケチれるところはケチっている医療機関の実態が見え隠れしていたのは御愛嬌だ。大きな声では言えないが、当院の待合ロビーのテレビも、デイサービスのテレビも、僕の家のテレビも地デジ切り替えまで1カ月を切ったのにアナログのままで、政府の言う地デジ対応済み99%というのがどこの世界の話なのか?僕には全く信じられないのである。

その待合ロビーの唯一の欠点と言えば・・・飛行機のファーストクラスに乗った際にスッチーがするように、スタッフが毎回名前を呼んでくれることだ。実は何人か知った顔があったのだ。僕みたいに金玉、じゃなかった肝っ玉が小さい人間は癌の宣告をされた瞬間に顔に出るので近所の人に感付かれると困るのである。日曜日の高額な検診を受けようって人だから開業医も何人かいたようだ。そのうちの一人は大学の後輩だったが、20年振りに出会って、「太ったんじゃない?」と言われたものの、反論できるハズもなく、先程計測された自身の体重が重く圧し掛かってきた・・・ 近所の眼科医もいたが、他にも開業医が数名いたに違いない。会社社長とかは平日に受けるのであろうが・・・

検診の際の着替えやロッカーもリゾートホテル並みに高級だった。当院のとは価格差3倍くらいはありそうだ。おそらく、全国のPET検診施設は似たり寄ったりの豪華さで受診者獲得合戦が行われているのであろう、どの世界も大変だと感じる。

 

そろそろ、検診の記録だ・・・

まずは、看護師さんの血圧測定と問診・・・ 幸い腹囲測定は免除された。収縮期血圧は114で、デブの割に低い。過去のエコー検査の結果を聞かれて「自分でやった」と答えたら、厚化粧の顔でクスッと笑われた。笑顔は当院の看護師の方が良かった。

次は、腹部エコー検査だ・・・ 若くてピチピチの女性検査技師さんと暗い部屋で二人っきりになった。壁の向こうの声が聞こえたが、密室内で間違いが起こらないための工夫であろうか? そのエコー検査は僕が知る限り相当長時間かかってしまった。脂肪肝のせいで見えにくかったのであろうが、お陰で検査技師と体位を幾つも変えて身体が接していたために、下半身の某器官が勝手に変化を来たしそうになって困ってしまった。その直後には、「ハイ下着をズラします・・」といって、僕のパンツを下にさげて膀胱と前立腺を押えつけ検査された。もしかすると僕のアレの変化に気付かれたかもしれない・・・ 結果は大したことなかったようだ。どうして時間がかかったのであろう?

次は、胸部と腹部のCT検査だ・・・ とりたてて書き遺す事はない。結果もとりたてて書き残す異常はなかった。

次は、いよいよ、PET検査に必要な放射性物質の血管内注入だ・・・ 腕の血管が上品すぎて静脈内注射がしにくい僕の肘を何度も恨めしそうに眺め触りながら、「他の場所から刺してもいいですか?」と弱気な看護師さんに、「うちの看護師さん達は何なく刺しますけどねぇ・・」と意地悪したら、頑張って綺麗に刺してくれた。僕が医師だと問診表で聞いてるはずで、サゾ意地悪な開業医と思ったことだろう。僕としては教育的な発言だったのだが。でも、翼状針は当院より明らかに高級品を使用していた。放射性物質なので汚染対策なのだろうか?

で、次は、安静室でその放射性物質が全身に均等にくまなく行きわたる様に、60分間の待ち時間となった。ネットカフェを思わせる狭く暗い部屋で眠れる事は嬉しいのだが、AVビデオもエロ雑誌も厳禁で、寝てる時のイビキを聞かれて「睡眠時無呼吸症候群の診断と治療法」を追加指示されても困るので気になって眠れなかった。だから60分がなんと長かったことか・・持参した高尚な本も取り上げられたし。

60分後に起こされ、排尿を指示された・・・ この時は排尿に実に気を配った。もし、尿中に含まれる放射性物質がペニスを摘んだ手に着いたり、パンツに着いたり、ペニスをブルンと振った際に水滴があらぬ場所に着いてしまうと変な場所に癌が疑われても困るし、手に付着して水で充分に洗い落とせるかも不安だった。「指先に癌がありますよ・・」と診断されても困るし・・・ってなことはないか?!

まあ、撮影自体は20数分で終了し、再撮影の指示もなく、何となく安心した気持で、その後の結果報告・癌の宣告を待つことになった。

 

15年くらい前にハシゴから倒れて背中を痛めて以来、時々息も出来ないくらいの強烈な痛みを覚えていたのだが、その原因を今日こそ確認すべく、MRI検査をオプションでお願いした・・・ 結果は実に明快、これまでの疑問が解き明かされた。必ずしも良い結果ではないが、癌転移やヘルニアや脊柱管狭窄症やカリエスや梅毒やスベリ症やその他の病気ではなくて大いに安心した・・・

ただ、MRI検査は喧しい音と閉所的空間だけが問題だとおもっていたが、僕の場合には背中を中心として余計なプヨプヨの水分が沸騰していく様な、茹であがっていく様な奇妙な熱感を予想外に感じてしまった。理屈的には理解できるのだが、磁気も放射能と同じく眼で見えないものだけに、ワープやタイムスリップなどの際は、身体中がミキサーにかけられたようになるのであろうと、映画【タイムライン】やテレビドラマ【仁】などを想像しているうちに検査が終了した。あと10分ほど長引けば気が変になりそうだった・・・

 

結果説明・癌の宣告をしてくれる先生は顔も経歴もよく知っていたが、3台のモニターの検査結果画像を示しながら丁寧に説明いただいた。医師なのでどうしてもパッと自分で異常を探しに眼が動くのだが、開口一番、「癌がまずないことをお伝えしておきます」と言われて安心して聞けたのも良かった。僕は深刻な気持ちが明らかに表情に表れる性格なので、もし癌の宣告を受けてしまったら、どんな顔で待合室に戻り家に帰り、家族と話が出来るのであろう? 

夜に妻子と検査明けの焼き肉をパクつきながらその点を話題にしてみると、「パパは絶対に秘密を隠せないタイプだし、眉間にシワを寄せ、額に手を当てて、周囲まで巻き込んで悲劇の中年医師を演じそうで・・・」と、子供ながらに父親の性格を完璧に読み切っていて、成長してるなあと感じた。嬉しいというか、悲しいとい言うか、図星だったから・・・

妻などは「癌だったらハッキリいてっちょうだい。覚悟が必要で、今後の人生設計にも関わることだから隠さないで・・」と、「ママは明日にでも生命保険に入るんでしょ?」と子供らに突っ込まれていた。どうやらこれも図星だったようで、額に汗が滲んでいた・・・

 

こうして僕のPET初体験は終了した・・・

目出度く癌はなかったのでホッとしたが、最後に栄養士資格を持つ受付嬢が「栄養指導いたしましょうか?」とお節介をしてくれそうになったので、丁重にお断りをして岐路に着いた。

もしも癌の宣告を受けたら、帰宅などせずにアチラコチラの妾宅を渡り歩き、繁華街でナンパしまくり、精力の限りを尽くし果ててしまおうと思っていたのだが、ホッとしてインポになって、台風の影響で風が強い街を愛犬と大人しく散歩に出かけてしまった。人生最後の日に最も身近にいてくれるのはヒョットシテ愛犬達かもしれない。

 

まあ、癌も無かったことだし、これからは周囲の意見も耳に入れず、たとえ嫌われてもバカにされても無能と言われ続けても菅直人と同じようにシツコク・ねちっこく、法を犯しても絶対に辞めないでいたいと思う、一定のメドがつくまでは・・・