Welcome To The Heartland

Back To The Street ふろむ診療所

神の領域

南の島でも今朝は結構冷えて途中で何度か眼が覚めた。それでも朝になって耳元でワンコが騒がしく動き回る物音で目が覚めるまで心地好い熟睡を貪った。

久しぶりに半屋外にある犬小屋の隣(というか中というか)で寝袋にくるまって寝た。屋根も壁も一応あるが薄くて透明で断熱性はあまりなく、早くいえば「サンルーム」なのだが、昼のサンルームは暑くても夜のサンルームは冷えるのである。早朝から空が明るくなって、チョットしたキャンプ気分が味わえて気持ちよく、時々ワンコと一緒に寝るのが趣味なのである。ただ、一応は家の外なのでカギがかかっていて家の中には入れない・・・

 

僕のイビキを我慢して眠っているワンコ達を見ていると、どんなに可愛くても犬は20年とは生きることが出来ず、昆虫も哺乳類も爬虫類も鳥類も、何もかも生きとし生けるものは寿命なるものを超えては生きられぬ運命であるから、永遠の生命を希求する心や、病気治癒祈願に精魂込めてきた歴史上の人物などの気持ちは判らぬでもないものの、やはり無駄な努力に思えてならない。若い頃はあまり寿命は考えなかったが・・・歳をとり過ぎたようだ。

 

古代から、各地に芽生えた多神教を中心に、ユダヤ教の様な一神教の場合も含め、【 神のなせる業 】の一つ一つに人々は純粋に驚き信心を続けてきた。人智を超えた【 神の存在 】を証明することは出来ぬとも、【 神のような存在・現象 】にかんして全く否定してしまえる人もあまりいないのではないか?

医学を学んだものの一人として、遺伝子治療関連の研究の曙に接して来たものの一人として、【 生命の神秘 】もまた【 神のなせる業 】という気がしてならない。

 

先週の事、ある製薬会社の方々と診療の合間に(患者さんを待たせてまで)僕の過去の研究のことや、知人・友人達の研究内容の話題になった。その時に、山中教授のiPS細胞に関する話題も流れで出てきたが、今朝の報道をみると、ノーベル医学・生理学賞の最有力候補とも言われていた様だ。結局は(僕の)予想通り受賞には至らなかったが、研究評価が定まりノーベル賞の栄誉に輝くとしたら、まだまだ先の事になるのであろう。【 神の領域 】を覗き込んだその先に・・・

 

http://blog.m3.com/BackToTheStreet/20080604/1

iPS細胞研究自体は様々な幹細胞系の研究の延長線上にあると思うし、その手の研究の端緒はもう20年以上前に始まっていると思う。僕の留学先でも当時、遺伝子を導入しての臓器形成や形質変化や、幹細胞作成や心筋細胞作製などは始まっていたし、僕自身のラボも幾種類かの疾患の遺伝子治療を世界最初に人間に対して行いセンセーショナルな話題をさらっていた。遺伝子治療の領域の研究者のうちの誰かがノーベル賞クラスの受賞をするのではないか? という熱気が漲っていたと思う、誰も「ノーベル賞」という言葉は口にしなかったが・・・

ただ、数年たち様々な実用化への困難が次々に研究者たちの眼の前に現れてくると、ある者は諦めて研究の現場から去り、ある者は無駄な努力にうずもれ人生を浪費し、ある者は功を焦り許されない研究上の過ちを犯し、ある者は少しでも可能性がありそうな再生医療の方向へ軌道修正をしていった。そして今、どの人生が賢かったかについてはまだ結論は出ていないように思う・・・

あれから早や20年ほどがたち、僕は完全に自身の研究の行く末に限界を感じ研究の現場を去ったのだが、同時に遺伝子治療全体の限界も感じてしまった。それでも当時としては最先端の医学研究領域に世界最先端の研究者たちと時間と場所を共有して生きていたことだけはヨカッタ・・・と、ささやかながら財産だと感じている。

そして、その当時の研究仲間の多くは今も研究機関や大学の教授などとして活躍してはいるものの、当時5年で可能だと感じていたことも、誰もが10年とか15年たっても次々に襲う限界を乗り越えていくことに苦労している様に見える。

再生医療、特にiPS細胞を用いた再生医療の領域も、人の疾患を治療していくという実用段階に至るには相当困難な道が待ち受けているのではないか? かつて遺伝子治療がぶち当たった壁に比べると比較的乗り越えやすい壁であることを願うものの、やはりその壁や限界は低くは無いように思う。山中教授自身も既に「何か得体のしれないもの」を感じているのではなかろうか?

僕は研究が進み実用化を前にして【 制御 】に関する問題が必ず立ちはだかると予測しているが、その遺伝子制御に関連するであろう個別の生命体における秩序ある【 制御 】の問題を研究者たちは期待通りクリア出来るのだろうか? 僕は「完璧」には難しいと感じている。そして、我々生命体は、人間であれ、ワンコであれ、昆虫であれ、鳥であれ・・全てか一個体一個体で「完璧に制御されて」生かされているのであって、「不十分な制御」では疾病を克服できないのと同じであろう。

このように、僕はiPS細胞研究に、かつての遺伝子治療研究の際と同じ「限界」が襲う・・・と悲観的な見方をずっとして来たのであるが、それ自体が山中教授のノーベル賞受賞を否定するものでは全く無い。完全なる実用化に至らずとも基礎研究における大いなる研究価値は変わらないのであるから・・・

 

ただ、明らかに人体や生命体には【 神の領域・神のなせる業 】の様な容易には辿り着けない秘密があると思うし、「あって欲しい・・」とも思う。そしてそれが、医学を学ぶもの、生命科学を学ぶものに飽くなき夢とロマンとを与え続けてくれるならば、【 永遠に解き明かせない神のなせる業 】を、まるで【 宇宙の果て 】のように追い続けて行くのも人類の喜びなのではないか? とも思う。

 

それにしても我が家のワンコ達は可愛い・・・

妻とは一緒に寝たいとは思わなくても、ワンコ達とは今夜もまた一緒に寝たいと思う。ただ、少々サンルームが寒い季節になってきた・・・ やはり妻の温かさが恋しい秋の夜である。

そう言えば、「異性」という存在もまた【 神の創りたもうた素晴らしきもの 】である・・・(余談であるが)

 

読んでくれてどうもありがとう