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晩秋の三股山、反省記

今年は週末に当地では天気が悪く、また本業としての学会や研究会もあり、なかなか愛人宅・・・じゃなかった、好きな山歩きへ行けなかったが、先の日曜日に今秋初めてようやく行ってきた・・・が、少々ヤバかった。なので、個人的に反省記を残す。

*後で読者指摘あり:三股は三俣山が正式表記らしいが、沢山書いたのでソノママで・・反省です

 

いつの間にか、南の島の山でもとっくに紅葉の時期を過ぎており、今年はもう樹氷観に行くくらいしか無理かなぁ・・と諦めにも似た気持だったが、往診に同行した看護師が「今度の日曜日、久しぶりに晴れの週末みたいですよ。先生、今年はどこか登りましたか?」と教えてくれたので、患者状態が落ちついたと思われる直前の土曜日の夜になって、妻と娘に「お願いがあるんですけど・・・、明日・・・山に行っても良いですか?」と恐る恐る聞くと、予想どうり「良いわよ、気を付けて。朝早く行くんでしょ? もう静かに一人で寝たら? 今夜は迫ってこないでね・・  で、一体どこ行くの?」と素晴らしい返事が来た。どこ行くかは寝ながら考えよう・・と、まだ決めていなかった。当然ながら、妻は呆れていた・・・いつもの事だが。

でも、ホントに天気は良いのだろうか? 女心と秋の空・・・だ

 

今度の山行きを決心したのは前日・土曜日の午後になってから。天気予報では「晴れ、降水確率10%」だったが、衛星画像の雲の配置から少々不安がよぎっていたのは確かだ。どうも薄めの雲が広範囲にかかり風で流される感じの「雲行き」に思われた。しかし、来週以降の天候は予想付かず、どうも今回が最後の機会かも・・と気持ちを焦らせた。得てして天候に関する直感は当たるものである。

 

さて、どこへ行くか?

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僕を10歳の時に初めて山登りに誘ってくれた従兄弟が、「九重で一番好きなのは三股だなぁ、三股はイイよォ」と最近話していたのを想い出した。僕は九重は、中岳・久住山・星生山・大船山など何度か登ってはいたのだが、三股山は横を素通りするだけだった。何か丸みを帯びた女性的な感じで、ヌルッとした面白みに欠ける山だと思っていたのだ。

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長者原から眺める三股も、牧ノ戸ルートの途中から眺める三股も、山なみハイウエイを湯布院方面から眺める三股も、九重温泉に浸かりながら仰ぎ見る三股も、どの方向から眺めても・・・三股は三股であって、どっしりとした母親が乳房を三つ持つような優しさと雄大さを併せ持つような山と感じていた。しかし、従兄弟の話を聞くまではあまり登りたいとは思わなかった、不思議なことに・・・

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まあ、どうせ紅葉も終わってるし、準備も何もしてないし、簡単そうな初めての三股にも登ってみるか? と、ベッドの中で安直な決定をした。そして、朝4時半に起床し、妻と娘の寝顔に「行って来るよ、死なないから・・」と挨拶して5時過ぎに家を出た。ワンコ達だけが時ならぬご主人の愛車の爆音に目覚めて「ワンワン」と送り出してくれた・・・

近くのコンビニで、水や食料品を買った。ついでに滑り止めがバシッと効いた軍手も買ってみた。それが後で役立つとはその時には思いもしなかった。ただ、今度は懐中電灯もセーターも忘れ、地図もネット情報も色々と忘れて出かけてしまった。まあぁイイか・・・・、三股だし?

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湯布院ICで高速を降りる時に、正面の由布岳には厚い雲がかかっていた。その頃、夜明けを迎えたのだが、周囲には想像以上に雲が多く、不安がよぎった。由布が快晴なら、そのまま今年も由布岳の「お鉢廻り」で興奮しようかとも思っていたのだが・・・

 

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長者原の駐車場に車を停め準備を済ませて三股を見遣ると、その頂きには朝日が輝いていた。爽やかな光の筋が鮮やかだった。(上写真の右ピークが本峰、左が北峰。真ん中手前が指山) 7:15 スガモリ越に向けて出発・・・ 大曲駐車場は既に満車だった様子。

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途中で仰ぎ見る三股山・北峰に飛行機雲が突きささろうとしている。良く晴れ、山頂は気持ちよさそうだ。きっと眺めも最高だろう、早いとこ 坊がつる・法華院を見下ろしてみたい・・・ただ、由布の方から雲が流れてくる気配、不安が再びよぎった・・・

淡々と少々味気ないスガモリ越ルートで三股に向かわんとする頃、見上げる頂きには早くもガスが・・・ 星生にも天狗にも久住にも大船にも、その頂には早くもガスが・・・ 三度不安がよぎった・・ 

一般向けの天気予報を信じるか? 自分の天気図読みや直感の方を信じるのか?  愚かにも天気予報を信じてしまった。今年最初の山登りのせいか、何か調子がおかしい。

 

最初の三股のピーク・西峰に到達した時には完璧にガスで覆われた。この後、本峰・大鍋・北峰へと向かうハズが、50m先が全く見えないのである。西峰のピークは想像以上になだらかで、先行する登山者の姿も見えず、朝早いので声も聞こえず、どっちへも何本もルートがある様な気がするが、初めての山で視界不良なので、他の登山者が先行してくれるまで我慢して待つことにした。

装備がキチンとしたベテラン風の夫婦連れが来た。彼らも不安そうな雰囲気だったが、ほどなく西峰から本峰のあるハズの方向へ静かに歩きだしたので後に付いて歩いた。向こうから数名の登山者が帰ってくる。相当早く出発したのであろうが、視界が悪くて早々に退却しているのか? でも、ルートとしては正しいのであろう・・・と思っていたら、先行する夫婦連れが立ち止った。どうやら彼らもガスの中でルートに自信が無さそうで、チラチラ見ながら僕を先に行かせたがっている様子だった。もしかしたら彼らも初めてだったのか? (後で判ったが、三股は初めてだったようだ・・・ 危ない危ない)

 

そうこうしているうちに、次のピークに着いた。後続の夫婦も続いて登ってきた。その後に数組が登ってきた。どうも先行組に付いてきただけのようで、全員が初めての様子だった。

でもこのピークには何も標識が無い。周りはガスで何にも見えない。ここはどこ? 私は誰? 腕時計の高度計で調べるとほぼ本峰・頂上の標高だったが・・・、後から色々考えると、どうやらそこは四峰という名の「ピーク」だった様だ。

 

ガスが少し晴れた際に、二つのピークが見えた。正面の谷の向こうにそびえ上がる様な峰・・ピークに標識が見える。もう一つは緩やかに登っていく丘の様なピーク・・・前情報からはあれが三股山の本峰であろう・・・。と、またすぐガスに隠れた・・・

その時、謎のピークに屯していたのは三股初心者のみ約10名(4組)、皆が地図を見ながら勝手なことを言っている。携帯のGPSで立ち位置を探すもの・・・。僕は腕時計のコンパスと高度計で方位と標高をチェック・・・。本来なら、三股の山上には、本峰・北峰・南峰・西峰・四峰の5つのピークがあるハズで、谷には大鍋・小鍋の2つの噴火口跡があるハズ・・・と思っていた。

西峰は越えた・・・。多分、さっきの左のなだらかなピークは本峰のハズ。ここは標識無しなので恐らく四峰だろう。では、もう一つ見えた険しそうなのは南峰? あるいは北峰? 一体どっちよ?

僕のコンパスは谷越えのピーク方向は東方向を指していた・・・。さて、東峰ってあったかな? この時、もう少し冷静に地図とニラメッコすれば良かったのだが、完全にガスの中に閉じ込められて冷静さを欠いてしまった。この下の谷が恐らく例の大鍋で、その向こうが北峰だろう・・・きっと。南峰はガスに隠れて多分どこにも見えないのだろう。

 

その時、僕ら4組のとった行動はバラバラだった様だ・・・。

僕の次の夫婦は、「とりあえず本峰に行ってきます」とナダラカナ稜線へ歩き出した・・・賢明だろう、安全そうだし、確かに頂上(最高地点)なのだから。

次のベテラン風高齢4人組は、僕が北峰と言うのを信じたかどうか、「あれが面白そうだし、まあ底まで降りて登ろうかな。ここ降りれるよなぁ?」と言い残し、グングン降りて底に到達し、またグイグイと登りだしたところでガスの中に消えていった。

僕は「せっかくだから険しい方が楽しかろう・・・」と、しばらく待ってもガスが晴れない中で先の4人組の後を谷底に向かって降りていった。

残った4人組は僕の後に続かなかったので、恐らくは本峰へ向かったのではないかと思うが、あるいは僕の後を追って、道を間違ったのかも・・・(ってなことはなかろうけど)

 

で、僕は踏み跡のしっかりした道を先行組を追うように降りて行った。多分、標高差は200m以内のハズ、100mかもしれない。目指すべきピークが見えないままに、滑りやすい道の足元に注意しながら慎重に下った。なかなか底に届かないし、とっても滑りやすい。でも足跡は残っている、この道のハズだ・・・

すると、不思議に前だけガスが晴れ・・・ なんと遠くの、遥か下の方に・・・ 見慣れた建物が見えた・・・ 法華院温泉の建物だ。でも、なぜ見えるの???  そう、どこかで道を間違ったのだ。多分、他の誰かも・・・ そして、この道は地図にも無く、きっと益々ヤバくなるはずだ。地図にある雨ヶ池ルートも危ないと言われてたし。遭難しちゃうだろう・・・

まだ、北峰と信じて向かっているピークは見えないが、ホントにやばくならないうちに引き返そう・・・と、冷静さを取り戻して登って行くと、パッと平らな場所に着いた。どうやら、そこが・・底だった様だ。でも目指すピークも、とっかかりのルートも分からない。腕時計のコンパスと、高度計と、サイクリング旅行で培った感を頼りに・・・ 赤い目印テープを見つけた。細いが、上に向かう確かな踏み跡があり、これが登山ルートのハズだ。よかった、頂上まで行けば誰かが来るだろう。後は、誰かさんに付いて降りればいい・・・

 

しかし、そのルートは葉が茂ってる季節なら見えなくなるくらい細く、枝も両脇から張り出し、ズボンの裾や上着や枝で破けそうなくらいだった。でも、なんとか頂上に着いた様だ。今も周囲は何も見えないが、誰もいないが、標識が見える・・・ 「三股山 南峰」

あれれ、北峰と信じて登ったピークは南峰だった様だ。それとも、ガスの中で目指していたのと別のピークに登ってしまったのか? 自分の居場所は確認できたが、ちょっと不安が増した。今日は少々オカシイ・・・自分自身が。

 

不安のせいか、残した愛する妻子のことが頭を過ぎった。とりあえず、ドコモの写メで、自分自身を撮影して「迷いながら南峰へ着きました・・」と送信してみた。

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便利なもので、山頂でも返事は素早く戻ってきた・・・ 「愛するアナタ、気をつけてね。谷底に転落しないでね。キット生きて帰ってきてね。でも・・・赤いの着てるから、もしもの時も発見は出来そうね・・」と、心配なのか平気なのか、あるいは生命保険の事を考えてニコッとしたのか判らないが、とりあえず、服装の情報を理解してもらって少々気が楽になった・・・ フランス風トリコロール、でした。ロシア風とも言えますが。それに遭難したら、GPS機能で逆探知出来そうですから・・・

 

まあしかし、南峰ピークに立ちながら遭難することはなかろうと思ったが、四峰らしきピークから見た目標が南峰だったかどうか、出来れば北峰に登りたかったのに・・・。そして、ホントなら南峰からは雄大な大船・平治と、ふもとの坊がつる湿原などなどが見渡せるハズなのに・・・。

そう考えていると、僕とは別の方向からオジサンが一人で登ってきた。躊躇せずに僕はオジサンに聞いた・・「アッチから北を目指して登って来たんですが、南と書いてあって、北峰や本峰にはどうやって行けばいいのですか?」と。 

 

そのオジサンがふり返った瞬間、ガスが一瞬だけ消えて三つのピークが浮かんだ。真ん中になだらかな本峰と思しきピーク。左には先ほどまで居た四峰と思しきピーク。そして、本峰のずっと奥の右手に初めて姿を現したホントの北峰。その荒々しい北峰の手前には大きな深い窪み・・・、これがホントの大鍋だったようで、さっきまで大鍋と信じてたのは無名鍋だったようだ。

嗚呼そうなのね? と一人合点してる間にまた全てがガスに覆われ消え去ってしまった。しかし、もう全てが頭の中にインプットされ、あとは腕時計コンパスと高度計と、ついでに温度計も駆使して進むだけ・・・と思いもしたが、そのオジサンが本峰と北峰行こうかと思いますが、一緒に行きますか?と誘うので、まさか山頂でオカマを掘られる心配もないだろうと着いていった。周囲に「オナベ」は幾つもあったが、「オカマ」は無かった。でもどうして、噴火口跡をオナベと言って、オカマとは言わないのであろうか? と、三股山の山頂で考えた・・・ よい答えは思い浮かばなかったのだが。

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そうして回り道をしてようやく本峰(ホントの頂上)に到着した。やはりガスの中で、視界は50mくらいだった。北峰も南峰も四峰も西峰も見えず、気温8度の平らな山頂で記念撮影をした。本来なら、半月ほど前なら、下のパクッた写真の様な素晴らしい紅葉の風景が北峰と大鍋に見渡せたハズなのに、かろうじて大鍋の底が見えただけだった。

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まだ昼前だったのでガスが晴れるのを折角来たから待つつもりだったが、30分待っても60分待っても全然ガスは晴れず、風も出てきてジッとしてると寒くなってきたので、眺望は次回の楽しみにと、なだらかな丘の様な下りのルートを降りていった。途中でふり返ると何度かガスが晴れていて、戻ろうかと考えたが、引き返してガスが出たら泣くだろう・・と感じ、下山することにした。

 

知らぬ間に西峰をショートカットして歩いていると、家族連れや友達グループなどが座って昼ご飯を食べていた。天気さえよければ気持ち良いハイキングの様な三股山なのだろう。見遣ると、別の噴火口跡の縁を歩いている人が数組見えた。地図には載ってないルートだったが、あそこなら坊がつるがよく見渡せるのだろう・・・とフラフラと、一応黄色い印が付いているルートを辿り、通常ルートをワザと外れた。そこから更に北千里ヶ浜方面へ降りる夫婦連れが見て取れたので、視界が悪ければそこから降りようと決めていた。

やはりガスで下は見えなかった・・・ 夫婦の後を降りることにした。が、そこは危険な崩落地の様な地形だった。どうやら、その夫婦は上級者ではないようで、夫が妻に「タオル一枚あったおかげで死なないで済んだと思っとけ・・」とか何とか言っていた。たかだた、100mか200mだろうが、何度か浮石に転んでしまった。緊張しまくって滑る様になんとか北千里ヶ浜まで降りてきた。二年前、運動靴の底が剥がれて歩いた道だ。精神的にも技術的にも全然進歩していない自分に反省した。

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いつもは素通りするスガモリ越だが、その時は無事の生還を感謝して、鐘を鳴らした・・・

 

気が緩んでしまったためか、大きな石がゴロゴロ転がる場所で、フト腕時計を見た瞬間、足元がフワッと浮いた・・・ そして、顔の前に大きな石が急速に迫ってきた。あと10cmでこの美しい顔と痛そうな石が衝突しそうな所で、朝のコンビニで買った強力滑り止め軍手が威力を発揮した。まるで映画スターの様に岩を軍手が掴んでいた。

カッコいいのか、マヌケなのか・・残念ながら観客は少しだったが、マジな話をすれば、あの瞬間に僕の美しい顔が潰れ、賢い脳が壊れていても不思議ではなかった。250円の軍手で死なずに済んだ・・と再び感謝の鐘を突きに峠に戻ろうかと思ったほどだ。

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トボトボと紅葉も完全に終わった道を下りながら見上げる三股の山頂付近は憎いほど良く晴れていた。天気予報とはこんなものだ。全ては時の運、暇人のように時を選べない僕には「次こそは晴れてね・・」と祈ることしか出来そうもない。

 

以上、長々と反省記を自分のために書きました。

 

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根性で最後まで読んでくれたアナタ・・・、どうもありがとう