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Back To The Street ふろむ診療所

また警察から電話が・・・

あと数日で2011年も終わる。今年の暮れは大震災のせいなのか、どうしても患者さんの死のことが心の中の多くを占める。これまでにあまりなかったことだ。

開業15年近くになって、永く診療して来た患者さんを多く亡くすようになった。開業医を続ければ続けるだけ多くの親しい患者さんを喪うのはしかたないことなのかもしれないが・・・

先日の非常に寒かった日が続いた晩に地元警察署の刑事さんから電話があった。今月になって2度目だ。その前は随分と無かったのに・・・。警察からの電話、特に刑事さんからの電話は思いっきり心臓に悪い。何であろう?と訝しがりながら電話に出ると、案の定、かかりつけ患者の突然死の話だった。

独居高齢女性の自宅内での突然の死・・・ まだまだ死をスグに予感させる病態ではなかった。80歳を超えるとはいえ、正直なところ想定外だった。

 

街がクリスマスムードに賑わっていた頃、その女性は自宅内で一人さびしく死亡し、開業医の僕は警察の車に迎えに来てもらい検死に出かけた。とても寒い晩だった・・・

刑事さんの対応や言葉遣いはとても紳士的で丁寧だ。後部座席のドアまで開けてくれる。しかし、検死先のご自宅に到着するまで、僕からは様々な患者情報を聞き出そうとするけれども、僕がどのような状況で遺体が発見され何が死因として疑われるのか聞いても答えてくれず、上手にはぐらかされた。自分としては、基礎疾患や季節的なこと、過去の病歴などから数種類の死因を想像し考えを巡らせるのであるが、「死亡されて発見された」としか情報をくれない。恐らくはマニュアルがあるのであろう、開業医も死因に関与している犯人候補として、「犯人しか知りえない証拠」を事前に被疑者の開業医には教えないマニュアルなのであろう。

 

患者さんのご自宅に到着し、遺体発見の状況を教えてもらい、恐らく死後数日が経過した「外因死」としか思えない変わり果てたご遺体と対面した。顔を拝見するもつらく、思わず手を合わせ眼を閉じた・・・ 

死因は誰の目にも明らかだった。開業医には落ち度は無いハズ、それでも事前には情報を流せないのであろう。判らないでもない、他殺や医療事故(ミス)の線も最初から排除するわけには行かないのであろう。捜査当局にとってはあくまでも「異常死」で、僕はとりあえず被疑者なのだろう・・・ ただ、司法解剖に至るか否かは検死における医師の意見も重要の様だ。今回は司法解剖にまでは至らなかった様だ。

 

あの優しかった柔和な笑顔の患者さんの変わり果てた姿が眼に焼き付いたつらい検死を終え、刑事さんの車で診療所に戻った。帰りは若い刑事さんが色々と患者さんの話の相手をしてくれた・・・

独居高齢女性の自宅まで凄く遠かった。バスなどの公共交通機関はなく、もしタクシーを利用していたなら往復5千円以上はするであろう。彼女は10年前にどうしてそんな遠方から通院されるようになったのであろうか?

一人暮らしのご自宅はとてもよくかたずけられ、今すぐにでも来客を迎えられるほどだった。元教師だったということも後から知ったが、診療所に帰って古い初診時の問診表に書かれていた「@@さんの妹さん」ということで、遠距離の来院理由に僅かばかりの合点がいった。あの@@さんの妹ならあのかたずけ様は想像がつく・・・なるほど、80歳過ぎてもシャキッとされていたのも頷けた・・・ だから縁を信じ、はるばる遠方より来院されていたのだと、感謝の思いを新たにした。

 

それにしても12月の独居高齢者の自宅内孤独死は非常に増えているようだ。特に寒い日の入浴は問題が多い。浴槽内で死亡のケースも少なくない。特に今は原発停止のために節電要請までされており、寒い日の孤独死は医師にとっても残念で悔しくて、医師としての限界を感じる時でもある。

やはり独居高齢者の問題はどうにかしなければ。認知症グループホームの入居者は手厚い介護体制で僕にも皆さん幸せそうに見えるのである。

 

もともと恐らくはクリスマスなど興味も無かったであろうが、街にイルミネーションが燈るそんな季節に孤独死を迎えるなんて・・・もっと高齢者の孤独な最期の様子が政治家達に理解してもらえるならば再び良き日本に戻れる気がするのであるが・・・

 

やはり亡くなった患者さんとの対面は悲しいものだ。特に検死でご自宅に赴くのは非常につらい。