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Back To The Street ふろむ診療所

カルテ開示

@@県弁護士協会とやらから先日ぶ厚い封書が届いた。

   (特定できない様に少し内容を変えています・・・)

弁護士という輩とはあまり付き合いたくないのでこれまで何にも頼んだこと無いけど、ポイっと捨てるのもどうかと思って一応開いてみたら、「回答依頼書」なる文書が入っていて、ナニやら4年前まで通院していた患者の「カルテ開示請求」みたいだった。

しばらく前にその患者の親族(子供:相続人)を名乗る人から突然に電話でカルテ開示請求されたが、全然面識もないし患者本人でもないし、「あなた自身か、弁護士さんが来院して請求下さい。拒むつもりもないですが、話はそれからです」と言ったことを想い出した。要するに、来院するのは面倒だから、電話じゃダメなら文書で請求するからカルテも資料も全部郵送してくれ・・。コピー代や郵送費は払うから・・」ということらしい。

別に当院の医療ミスでは無く、患者の遺族の相続争いのようで、通院歴のある医療機関のカルテを集めているようだ。カルテを読み返すと、少なくとも5カ所の医療機関に通院歴があるので全部を請求するのも大変だろう。

ただそこに、チョット問題な記述が見つかった・・・

電話して来た相続人とうまく行ってなさそうな状況をカルテに記載していたのだ。「病院に(その子供が)連れて来てくれないので、薬が一月以上切れてしまっている。心臓が悪いんだからチャンと通院して下さいね」という内容で、その後しばらくして別の子供(相続人)の家に転居していることも書いていた。もちろん転居理由が前者との不仲だけとは思えないが、今になって前者が後者を訴えている点から推測するに、患者は後者に有利な遺言書でも書いたのだろう。

カルテ開示請求の目的は不明だが、死亡の3年前に紹介状を書いて後者宅近くの医療機関に転院していたので、純粋な医療問題ではなく、高齢患者の認知症の有無でも探って、「遺言書の無効」でも争うつもりなのであろうか?と勘ぐってしまう。

たかが遺産相続くらいで骨肉の争いをするのに医療機関が巻き込まれるなんてイヤなこった・・・と思うのだが、金がらみの争い事は世界中至るところに転がっているのであろう。

だが、今日書きたかったことはそこじゃない・・・

請求して来た前者は患者の子供の一人で、後者も子供の一人。当院では高齢者の緊急時連絡先をカルテに出来るだけ記載しているが、前者の電話番号も一応書きとめていたのだった。この人に対する患者の感情も生前に聞き及んでいたが、そんなプライベートなことはさすがにカルテには書いていなかった。

今回の突然のカルテ開示請求は電話でだったのだが、顔も声も患者との正式な関係も知らないので、名前は聞いてもそう簡単に送れるはずもない。今どきは銀行で送金する時も身分証明書を求められるし、印鑑証明をもらうときでも同様だ。写真付きの証明書を求めずに重要なことをする医療機関の方が不思議なのだが、誰もそこを言いだすことはない。

でも、その怪しげな電話のナンバーディスプレイを当院の事務員は用心のためメモしていて、実はそのカルテの番号とは異なっていたのである。要するにどこにも本人確認の術が無かったのである。

仮にどこの誰か身元確認もできずに電話でのカルテ請求にコピーを送付したらどうだろうか? 

もし偽った誰かなら・・・親族以外にカルテ開示した当院の罪は重かろう

もし訴訟の相手が開示を了承しなかったら・・・不利益を被ったとして承諾も無くカルテ開示した当院を訴えるかもしれない。

実際にそのような遺族間の相続争いでカルテ開示請求は珍しくないらしく、「民事不介入の原則」でカルテ開示を拒むケースも少なくないらしい。今回のケースも正にヤバい民事訴訟だと感じるので悩ましい。

当院としては医療ミスでもないので開示そのものは別にどーでもいいのだが、ただ電話一本で請求し、それがだめなら封書一通で請求するその態度が気に喰わない。だから死んだ患者が引っ越したのであろう。

まあ、失礼な社会になったものだ。

死んだ患者もきっと草葉の陰で悲しんでいることだろう