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阿蘇100km引きずり回しの旅 ②

僕が医局を離れて16年になるが、先日の同門会で現役講師でもあるA君が笑顔でこう僕に話しかけてきた・・・『M先生の影響で僕もサイクリングを始めました。先日はB山に行ってきましたよ』

A講師は僕が医師になって14年目の頃に指導していた研修医だった。当時はドンくさい研修医で指導するのも大変だったが、今では特殊技術を臨床で持っているので医局の稼ぎ頭で期待の星。僕も随分と患者さんの紹介をしているが、40歳を過ぎメタボ体型を克服したいと一念発起して自転車を買って各地でサイクリングイベントにも出場しているらしい。

初めて半年くらいで富士山の標高差1400mほどのヒルクライム・イベントに参加したり、沖縄の距離160kmのセンチュリーラン・イベントを制限時間内で走破したり、今回のB山の標高差800mのヒルクライムをやったりと、僕の満1年の頃よりも精力的に楽しんでるようだった。

ただ、その割には体重があまり期待通りに減ってなさそうで、ちょっと不思議な感じもしたのだが、僕が週末に阿蘇に行く予定をたてていたので誘ってみたら超乗り気で即決となった。いわく、『いちどラピュタに登ってみたかったんですよ、行くんでしょ? 阿蘇は初めてで楽しみだなぁ』

それを隣で聴いていた僕と同期のS君が、『ラピュタに最初に行くのはいいけど、後のコースもアップダウンが繰り返して足に来るから、あんまり最初っから頑張らないように気をつけるんだよ』とA君に的確なアドバイスをしてくれた。S君は僕よりも更に走りこんでいて引き締まった身体をしており、医局同門会で一番のサイクリストかもしれない。当日は別の場所に走りに行くという・・・また今度。

さて阿蘇内牧温泉に朝9時半に集合し、車に積み込んできた自転車を組み立てた。僕の計画は、阿蘇外輪山の北と東方面を中心に、走行距離130km、総獲得標高差2200m、500mの標高差の坂を2回と標高差300mの坂を3回含むコースで、僕単独で走る場合の予測タイムは食事休憩を含み約7時間と考えていた。10時出発で17時帰還、遅くとも18時までにはパンクしても戻る計画だった。

A君の脚力は彼のイベント参加経験から推測すると僕の計画でも走破可能と判断したのだが、自転車ウエアに包まれた彼のメタボ体型を見て実は少々不安にもなった。でもニコニコして今から聖地ラピュタを目指そうというA君が距離160kmも経験し、標高差1400mも経験しているらしいので余計な心配は無用だろう。そんなイベントに参加経験のない僕より下手すると速いかもしれない・・・、なんといっても一回り以上若いのだから。

でも、走り出したら随分と遅れて付いてくる。腹が邪魔なのか身体が起きて軽快な印象はない。もっと遠慮せず僕の直後について風を避ければいいのに・・・

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聖地ラピュタ阿蘇外輪山の内側の底から標高差500mを駆け上がる眺望の素晴らしい農道である。最近は有名になって上から眺める観光客も増え、なぜか登らずに爆音を立てて下るモーターバイクが自転車以上に多い。農道とはいえ全国のサイクリストがわざわざ阿蘇までラピュタを登りに来るほどの坂である。平均斜度8%が6km近く続く。僕も3回目、阿蘇初体験のA講師にもあこがれの場所だったようだ。

『ヘエ? ここが登り口だったんですか? 全然わかりませんね、案内板も出てないし』と楽しそうに登り始めた。

経験者として僕は彼に『最初はユックリ登って足を温存しておきなさい。まだ100km以上あるんだし・・』と優しくアドバイスしたのだけど、超真面目な彼は実にゆっくりと登ってくるので「そこまでユックリじゃなくてもいいんだけど・・・」と内心思ったほどだ。

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僕が先に待ってて写真を撮ってあげたが、その都度ニコニコして手を振って余裕の表情も見せるのではあるが、その後ろから見たメタボ体型は坂道を上るには重そうで、先行き不透明な出だしのラピュタとなった。

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『心拍数が160/minを超えないようにハートレーとモニターを見ながら登ってますから大丈夫です』とA君はいうので流石に不整脈治療のエキスパートだと感心したが、自分の経験から言っても「デブは坂道に弱い」という法則はよく当たる。少し心配になったが、なんとか休憩もせず淡々と登り切ったA講師は上から眺める初体験の聖地ラピュタに感激していたし満足そうな笑顔を見せてくれた。

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観光客の視線を後に標高1000mの阿蘇北側の外輪山の上を走るミルクロードから広域農道・通称「マゼノミステリーロード」を豪快に下り、そのまま道沿いに蕎麦屋さんが点在する「そば街道」を標高差500mほど下り降りた。木立の中を日陰で走りやすく、舗装もきれいでお薦めの道だ。

最初に立ち寄った最も有名な蕎麦屋Tの対応が非常に悪く時間もかかりそうな感じだったので、別の店Hに移って美味しく気持ちよく「ざるそば・特盛」を食べた。非常に美味しかった。

南小国から反転し県道40号線を南に走り登った。標高差300mで県道11号の通称「やまなみハイウエイ」と交差する。このあたりで随分とA君が遅れだした。結構ゆっくりと走ったが彼の姿がなかなか見えない。500mの後の300mの長い坂なので確かに足に来始めているのかもしれない。

峠となる交差点で彼を待った。辛そうなので彼に「どうする? コースを短く楽に変える? まだ半分も走ってないけど・・」と聞くと、「先生の計画のコースでいいです。でも、ちょっと水が欲しいです」とヤッパリ辛そうである。ここから坂を300mほど下って、それから500mほど再び戻るか、それが無理ならコースを変えて200mだけ登るか、いずれにせよ下ったら登りが待っていて、「大丈夫か? 下ったら登らないと家に帰れないぞ」と念押ししたけど苦笑しながら頷くので坂を駆け下りた・・・ 下りは重い方が速くて元気を取り戻したかに見えたが下りも終わって再び長い長い登坂が僕らを待っていた。天気も良すぎて水分補給が間に合わないくらいなので自動販売機があれば休憩を繰り返して彼の様子を見ながら走った。

しかし、まだ合計800m程の標高差を登らないといけない。僕はペースが遅かったので全く息も上がってはいないし物足りないのだが、どうも制限時間内に予定のコースを走破するのは困難な雲行きだった。

阿蘇100km引きずり回しの旅③】に続く予定です。

頑張れA君・・・