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阿蘇100km引きずり回しの旅 ③

今では医局になくてはならない存在になったA講師ではあるが、僕にとっては可愛い永遠の研修医。彼にとっても僕は永遠に小うるさい説教好きの指導医なのかもしれない。

そんなA君と僕が一緒に走り出せば、ヤバそうに感じながらも僕の計画に素直に黙って従ってくれたのかもしれないが、途中からは相当つらかった様子だった。何度もルートの変更を提案したけど「計画通りにお願いします」と彼もまた僕に気を使っていたのだろう。

40号線から産山で131号線に入り、久住で442号線を折れて11号線と交差する瀬の元高原へは標高差500mのダラダラした登りが延々と続いている。平坦地や下りでは元気が戻るA君も登りとなった途端に口数が極端に減りまるで厳しい先輩に100本ノックの試練を与えられてしまった子供のようでもあった。淡々とペダルを回すが、後ろで見ていてもギヤ比の選択が億劫になってしまっていそうだった。交通量が多い道では僕が彼のすぐ後ろから見守るように走りながらアドバイスを与えるのだが、それにしても遅い・・・、ジレッタイほどの遅さだった。A君、どうしちゃったのだろう?

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途中の凄く展望の良い公園内の建物でA君はしばし休憩をして、水分の補給をし、水を頭や肩や腕や足に流して熱を取り去ろうと熱中症対策も万全だったはずなのに・・・A君の表情は硬い。ホントに大丈夫なのだろうか? 無理しなくていいのに・・・ヤッパリ先輩には文句も言えないのであろうか? 

暑さでドロドロに溶けてしまったチョコレートで糖分を補給しながら遅れて登ってくるA君を待つ時間は非常に長く感じた。ひょとしてダウンして倒れちゃってはいないだろうか? そんなことを何度か思い浮かべた。ちょうど久住山系の南登山口から眺めるピークの連なりは普段目にするそれとは違って美しい。最も右のピークが当日山開きで山頂で身動きできなかった大船山だった。

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そこの雨降峠には、昭和3年6月に北原白秋が詠った短歌の歌碑がたっていた。

草深野 ここに仰げば国の秀や 久住はたかし 雲をうみつつ 

写真撮影をして今度は先に行かせた追いかけたが急がなくても直ぐにA君に追いついてしまった・・・、何か身体にトラブルでもあったのだろうか?

後で聞いてみると、すでにその時には大腿部が攣りそうで、坂道を見たくもなかった様子だ。そこで急遽予定変更して130kmコースを100kmコースへと思い切って短縮した。何はともあれ、無事に帰還することが最も大切なのは明らかだ。

どうも電動ギヤ変更器機の調子も狂いだしていたらしい。アップダウンのせいで過度に酷使したからか? 僕の手動式は快調だったが、電動だと自身での調整もしにくいので走り終わってから彼の自転車は入院してしまった。

それでもう登るわけにもいかなくなって、完全に足にきている彼と瀬の本高原からやまなみハイウエイを阿蘇方面に下ったが、後ろからピッタリついて見守りながら走った。でも、「下りではデブは速い」ので僕の方が遅れてしまう・・・ 少し登るとすぐ追いつくが・・・

そして最後のご褒美ということで、車田全く走らない草原の道を走り、秘密の絶景ポイントへと彼を誘った。ミニ・ラピュタという阿蘇五岳一望のミニ聖地は観光客もモーターバイクも来ない静かな絶景ポイントだ。

そこへ向かうわずかな上り坂も彼には苦しそう・・・ いわゆる「ハンガーノック」だったようだ。ボーっとして視野が狭まって口数が減り惰性で足だけは弱弱しく回る状態・・・ 自転車乗りを時々襲う低血糖症状だったようだ。僕自身はまだ幸い経験がない。

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彼にとっては初体験、自己診断で糖分補給して何とか回復し、明るい気分になり足も戻って彼はミニ・ラピュタを感動の声で眺めることが出来た。もうすぐ90km、予定より30kmほど短くなった旅も下りを残すのみだ。ここから400m楽しみながらユックリと下ろう。僕がもう少し早めに気付いてあげればよかったが、体調の変化を先輩には言い出しにくかったのであろう。今後は気をつけたい。

この小嵐山の九十九折を下って山裾の道を内牧に走る。到着した時には満足げだった彼も今回の105kmの先輩との同行旅はつらかった模様だ。

僕にはいろんな意味で学ぶことも多かった。サイクリング自体としては大幅に短縮し僕にとってはかなり物足りなかったが、思い出深い旅となった。なにより他の脚力の劣る人と一緒に走る際の勉強になった。

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阿蘇100km、獲得標高2000mの引きずり回しの刑・・じゃなかった、旅】も夕方5時半に無事?こうして終わった。

A君にはこれに懲りずにサイクリングを楽しんでいただきたい。

『体重を10kg落として精進します・・また誘ってください。日曜日は空けてますから・・』と彼の言葉が笑顔だったのでほっとした。

次は150km、総標高差2500mを目指そうね・・・A講師!

読んでくれてどうもありがとう